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「ん…あれ?」
次に目が覚めると、私はベッドで寝ていた。私さっきまで夜市にいたような…
体を起こそうとすると、足のあたりに重みを感じた。よく見ると、有岡くんが私の寝ているベッドの横の椅子に座ったまま、突っ伏して寝ている。
「有岡くん …?」
試しにそっと呼びかけてみると、むくりと起き上がってこちらを見た。そして状況を理解すると急に真剣な顔になって、大きな声でまくし立てた。
有「Aちゃん!起きた?!大丈夫?!」
「うん、大丈夫…」
有「はぁ〜、良かった…心配したんだよ…急に倒れちゃうんだもん」
そうか、私は臭豆腐の臭いにやられて倒れちゃったんだ。もともと人混みで気分が悪くなっていたし、最後の追い打ちが臭豆腐だったということだろう。
有「とりあえず背負って大急ぎで先生の所まで走って、そのままホテルに戻ってきたんだ。全然気にしてあげられてなくてごめんね…」
「…もしかして、私に着いてきてくれたの?」
時計を見ると、まだ他のみんなは夜市を回っているはずの時間。まだまだ見たいところだってあっただろうに、私を運んでくれたなんて申し訳ない。
有「そりゃもちろん。倒れたままで放っておけるわけないじゃん」
一瞬きょとんとしたけど、すぐに笑顔で返してくれた。本当に優しい。こんなに人に心配してもらったことなんてないかも。
有「…何で泣いてるの?俺、気に障るようなことした?」
「…え?」
気づけば泣いていた。何でだろう、嫌なことがあったのかな?
…ううん、違う。
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作者名:あんず | 作成日時:2018年6月3日 17時