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練習を初めて1時間が経った頃、中島くんが思い出したように話題を変えた。
中「そういえば先輩、もうそろそろ3時だし、おやつ食べませんか?ケーキあるんですよ!」
「えっ、ケーキ?」
中「そうです!休憩がてら食べましょうよ!」
そう言われそのまま中島くんの部屋に戻った。1度出ていった彼は、程なくして紅茶とケーキを運んできた。お盆の上には美味しそうなチョコケーキが2つ。
中「どうぞ!ここのケーキ美味しいんですよ」
「ありがとう、いただきます」
一口食べると、濃厚なチョコの甘みが口に広がった。久しぶりに甘いものを食べると、何だか癒される気がする。
中「どうですか?美味しいですか?」
「うん、すごく美味しい。甘さがちょうどいい感じだね」
私が答えるとすごく嬉しそうな顔で良かった〜、と言った。その後はやっぱり音楽の話になっちゃって、食べながらもずっと話していた。
「美味しかった、ごちそうさま」
そう言ってお皿にフォーツを置くと、中島くんが私の顔を見て何かに気づいた様子。
中「先輩、チョコ付いてますよ」
「え、どこに…」
中島くんに教えてもらおうとすると、彼はそのまま手を伸ばして私の唇に付いていたチョコを拭いとった。そして
中「取れましたよ…甘いっすね」
そのままそのチョコがついた指を舐めてしまった。その時の彼の顔がいつもと違うように見えて、何かムズムズした気持ちになる。
「あ、ありがとう…」
中「じゃあ練習再開しましょっか!先に部屋で待っててください」
何事も無かったかのように爽やかに言い放って、彼は食器を片付けに行ってしまった。私もどうしようもないのでそのまま防音室へ行く。
一体中島くんのあの顔と、私のこの気持ちは何なんだろう…
そこからは何事もなく、ドラムの練習を続けた。彼は言ったことをすぐ吸収するからどんどん上手くなっていった。
練習に熱中していたけど、気づけば日が傾きかけていて帰らなくてはいけない時間になった。
「そろそろ帰らなきゃ」
中「そうっすね…いつの間にこんな時間だったんだ。楽しすぎて気づかなかった」
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作者名:あんず | 作成日時:2018年6月3日 17時