第78話 ページ30
ひとまずラジが戻るまで、部屋のバルコニーで待つ。
城下に行きたいなぁ、と話していると、白雪の家が酒場だったと聞いてオビとAは驚いた。
「え！？」
「そーなの！？」
「亡くなった祖父母がやってたんだ」
意外だなぁ、と白雪の顔を見て思う。
勝手に薬屋かと思っていたからだ。
「そういえば…前に山生まれだって話してたよね」
「うん、小さい頃はまだ山のほうにいたらしいんだけど、あんまり覚えてなくて」
「へーえ…それ、主たちは知っているのかい？」
「今身内がいない事はね。薬室長も知ってる」
そうなんだ、とAは黙ってしまう。
白雪に身内がいないことは聞いていたが、ゼンに聞いていただけだったため、白雪本人の口から聞くのは初めてだった。
Aは、人に話せるような過去の話はない。
７、８歳までの記憶が全くないというのもそうだが、その後の人生も明るいものでは決してなかった。
「どの辺？お嬢さんのいた家」
「えーっと…方向としては、あっち…。でもさすがに、見えないんだよね」
「そっか。ま、今度この国に来た時は下町にも山にも、好きに行けるでしょ」
「…！うん！」
故郷を思い、寂しそうな表情をした白雪だったが、オビの言葉に嬉しそうに笑った。
それを見たAは「いいなぁ…」と思ってしまう。
が、思うだけでなく口に出てしまっていたようで。
「A嬢？」
「ん？」
「どうかした？」
大丈夫かい？と心配そうに言ったオビに答えようと口を開いたとき、ラジの声に遮られてしまった。
「白雪どの」
「はい、ラジ王子」
はっ、と返事をする白雪に、ラジは客人用の案内図を渡した。
好きに選んでいい、と言う。
そして白雪が選んだ場所に、Aは「白雪らしいね」と笑った。
「――― 失礼、行かれるのはよろしいですが、陰から見物されているようですよ」
「えっ、どっ、どこからだ！？」
オビの言葉に、ラジと白雪は驚いて周りを見渡す。
「あちらとか」
「向こうとか」
気付いていたオビとAが向く方向で、人影が隠れるように動いた。
他国の城はこんなもんなのかと思っていたAは、兵がいつもより多いのだと知って驚く。
白雪も同じだったようで、多かったんですね、と驚いていた。
「よい事を思いついた。こっちだ」
ピーン、と何かひらめいたラジがすたすたと歩いていく。
白雪とオビ、Aはひとまずラジの後ろをついて歩いていった。
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Lily(プロフ) - 48、49話は前編のほうになります！続編は50話から始まります！ (2018年6月10日 0時) (
レス) id: 781d18f1a5 (このIDを非表示/違反報告)
Lily(プロフ) - campanaさん» campana様 ありがとうございます！話数でしたが確認したところ、48、49話を非公開にしたままでした…(-_-;)ご指摘いただき、ありがとうございます！公開設定に変更しましたので、お読み頂けたら幸いです。コメントありがとうございました！ (2018年6月10日 0時) (レス) id: 781d18f1a5 (このIDを非表示/違反報告)
campana(プロフ) - 続編おめでとうございます！あの前編では47話で続編に入っているのですが、48・49話が無いので気になっているのですが… (2018年6月9日 4時) (レス) id: 04f37541ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Lily | 作成日時：2018年5月21日 2時
