第72話 ページ24
「ありがとうございました、ハルカ侯爵。ウィスタルまでお気をつけて」
ピシ、と姿勢を正すオビの横で、白雪が礼を述べる。
やっと、というべきか、ついに、と言うべきか。一行はタンバルンへの国境へと到着した。
「…君も、招待を受け、イザナ殿下の御命令があった以上、無様な思いをして帰って来るだけにならぬようにしろ」
ハルカ侯爵は白雪を真っ直ぐに見つめて言う。
そして、Aへと向き直る。
「君も、だ。自分の行く道を迷って来るだけにならぬように」
「は、はい…！」
うむ、と頷いたハルカ侯爵は馬車に乗り込み、ウィスタル城へと帰っていく。
馬車が遠ざかるのを見送り、オビが「堅物」と呟いた。
「――― 入ろう、タンバルンに」
白雪は国境の門を見上げ、覚悟を決める。
再び馬車に乗り込み、タンバルンの城へと向かった。
道中、後を付けられていないことを確認するオビ。
Aも警戒はしていたが、馬車にいる以上は今までのように気配を探るのは難しかった。
「お嬢さん、タンバルン出身て話だけど、この辺は詳しいのかい？」
「そっか、白雪ってタンバルン出身だったんだっけ」
馬車に揺られながら、タンバルンの景色を眺める。
来るまでに聞いた、タンバルンでの白雪の騒動を思い出した。
「いや、まだ先まで行かないと。居たのは王都のちょっと外れだから」
「へーえ」
「そうなんだ。城下町？」
「ううん、もう少し遠い田舎町だったよ」
「へー」
他愛もない話をしながら過ごしていく。
いつか、白雪の居たところに行ってみたいなぁ…とAは思った。
そうして、最後の宿の夜が明ける。
Aは今までの軽装だった服を仕舞い、城へ行くときに着るようにと用意された服に袖を通す。
ひらひらと装飾が多く、ふわりと揺れる膝丈のワンピース。
髪の色と合わせたのか知らないが、暗い色でと頼んでいたはずが、淡い水色になっていた。
少し胸元が空いているし、スカートも膝丈のせいで武器を隠す場所がない。
「…はぁ。仕方ないか」
溜息をついたAは、長い髪をひとつにまとめた。
眼帯が目立たないように、前髪を横へと流す。
「うー…やっぱやだなぁ」
「何が嫌なんだい？」
「えっ」
ぼそり、と呟いた独り言に返事が返ってきて驚く。
振り向いた先には、すでに着替えを終えたオビがドアにもたれ掛かっていた。
「オビ…」
「おはよ。入ってもいいかい？」
にこり、と笑うオビを、Aはむすっとした顔をしたまま招き入れた。
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Lily(プロフ) - 48、49話は前編のほうになります！続編は50話から始まります！ (2018年6月10日 0時) (
レス) id: 781d18f1a5 (このIDを非表示/違反報告)
Lily(プロフ) - campanaさん» campana様 ありがとうございます！話数でしたが確認したところ、48、49話を非公開にしたままでした…(-_-;)ご指摘いただき、ありがとうございます！公開設定に変更しましたので、お読み頂けたら幸いです。コメントありがとうございました！ (2018年6月10日 0時) (レス) id: 781d18f1a5 (このIDを非表示/違反報告)
campana(プロフ) - 続編おめでとうございます！あの前編では47話で続編に入っているのですが、48・49話が無いので気になっているのですが… (2018年6月9日 4時) (レス) id: 04f37541ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Lily | 作成日時：2018年5月21日 2時
