第62話 一歩前進 ページ14
――― 翌日。
「どうぞ。白雪どのとAどのは、こちらの練習部屋におられます」
「どうも」
従者に案内され、練習部屋の前でお礼を告げたのはオビだ。
微かに夜会で聞くようなクラシックと共に、コツ、と足音が聞こえた。
「失礼」
オビは扉を開けて中に入る。
目的の人物へと目を向けると、思ってもいなかった格好にぎょっと驚いた。
「！オビ！！」
「あれ？どうしたの？」
ふわりと長いスカートを靡かせて振り向いた白雪とA。
見たことのない恰好で、普段とは違う雰囲気に驚いた。
「なんだびっくりした。本人か」
「いい所に…！オビ、練習相手になれない！？」
「はい？」
コツコツと足音を鳴らしてオビへ近づく白雪。
オビは、何のこと？と首をかしげる。
その後ろで、Aはただ苦笑していた。
「だ…大丈夫ですよ、白雪どの……」
後ろから聞こえた声にハッと振り向く。
Aが心配そうに見つめる先に、足元を抑えて蹲る男性がいた。
「はじめは誰でも…難しいものです…」
「…あの人は？舞踏の先生？」
「…私が足を何回も踏んで…申し訳なくて…」
「白雪、覚えるのは早いのにね」
動きを頭で理解できて覚えても、それを体で動かすのはまた別だ。
足運びがうまくいかず、何度も先生の足を踏んでしまっていた。
「そりゃ勿体ないお誘いだけど、俺これから己早どののお守りだからさ」
「え？」
「うっそ、もうそんな時間…」
行かなきゃ、と離れていたAもオビと白雪のそばに寄る。
「ゼンの意向で？」
「そだよ」
「そっか…」
舞踏の先生に聞こえないよう声を潜める。
「私も巳早にはもう一回会って、港のほうに情報探しに行きたいんだけど…」
白雪の言葉に、私も、とAもうなずく。
それを聞いてオビは、やれやれ、と顔を顰めた。
「たくましいねぇ…主もお嬢さんも、Aもね…。
でも、あんたたちはこっちのタンバルンの件で手一杯でしょうが」
「うっ…」
さっきまでの舞踏の練習を思い出し、白雪は言葉に詰まる。
これに関してはAも苦笑するしかない。
「今は美少年の方は俺と主に預けときな」
そう言って背を向けたオビ。
Aは「ちょっと待ってよ」とオビの服を引っ張った。
「え？」
「私は行くよ。舞踏の練習は今日はもういいかな」
「A…上手だったもんね…」
白雪はAの踊りを思い出して悔しくなる。
Aは舞踏の経験はあまりないが、仕事のためにと覚えていることもあって踊ることはできていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 135人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Lily(プロフ) - 48、49話は前編のほうになります！続編は50話から始まります！ (2018年6月10日 0時) (
レス) id: 781d18f1a5 (このIDを非表示/違反報告)
Lily(プロフ) - campanaさん» campana様 ありがとうございます！話数でしたが確認したところ、48、49話を非公開にしたままでした…(-_-;)ご指摘いただき、ありがとうございます！公開設定に変更しましたので、お読み頂けたら幸いです。コメントありがとうございました！ (2018年6月10日 0時) (レス) id: 781d18f1a5 (このIDを非表示/違反報告)
campana(プロフ) - 続編おめでとうございます！あの前編では47話で続編に入っているのですが、48・49話が無いので気になっているのですが… (2018年6月9日 4時) (レス) id: 04f37541ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lily | 作成日時：2018年5月21日 2時
