8 白雪姫 ページ8
「Aどの、さっそくなんだが、我々の客人ということになっている。
そこで、あまりかしこまった言葉遣いはやめようと思うんだが…いいだろうか」
『えぇ、好きにお話して構いませんわ。私もそうしたいのだけど…ずっとこうだったからわからないの』
「いや、無理はしなくてもいい。A、と呼んでもいいだろうか」
『…!ぜひ、お願いしますわ!ずっとずっと”白雪姫”と呼ばれていたの。名前を呼んでくれるのはとても嬉しい…。ミツヒデ様、木々様、オビ様、ぜひAと呼んでほしいですわ』
「え、いいのかい?」
いや、さすがにそれは…!と言うミツヒデとじゃあ早速と言う木々とオビ。
いつかのやりとりのようだった。
「それじゃあ、俺のこともオビ様だなんて呼ばないで、オビって呼んでよ」
『いいのかしら…?えぇと…オビ?』
名前を呼ぶと同時に目が合う。
少し驚いた様子のオビだが、すぐにいつものようにへらっと笑った。
そしてゼンも木々もミツヒデも、呼び捨てで構わないということで、だんだんと打ち解けた話ができるようになった。
「そういえば、白雪との薬室はどうだったんだ?」
『とても楽しかったわ…!見たことのない花や木がたくさんあって、白雪さんに教えて頂きましたのよ』
「それはよかった。さすが白雪だな」
『ココ草は夜に採取する、と言っていたわ。私のいたお城の庭にも夜に色の変わる花があったのよ』
「へぇ、色が変わる…?」
『スイフヨウと言ってとても可愛らしい花ですの』
どんな花なんだ?と首を傾げる。
えぇと、と説明しようとするAだが、先に口を開いたのはオビだった。
「朝には白くて、昼には桃色で、夜には真っ赤に染まる、って言ってたねぇ」
『あら、聞いていらしたのね?』
「もちろんです」
ふふ、と笑うA。
白雪と花や薬草について話が盛り上がっている間、暇そうにしているオビだったので聞いていないのかと思っていた。
そんな花があるなら見てみたいなぁ、と話す。
それから他愛無い話をしながら食事を進めた。
丁度食べ終わるころ、扉がノックされる。
失礼します、と入ってきたのは白雪だった。
「薬室から差し入れです」
「白雪、ありがとな」
「いえいえ、お安い御用です!」
笑って薬膳茶を入れる。例のロカ茶だ。
お茶を注いで、ロカの実をひとつ入れる。
ふわ、と甘い香りが漂った。
21人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Lily | 作成日時:2018年2月16日 1時