赤髪の白雪姫と黒髪の白雪姫 (ページ31)

今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:11,998 hit

番外編：白雪姫のお父様ページ31

そして、王様はAを遠くから見つめる。
とても楽しそうに会話し、にこにこと笑っている表情を見ると、幼いころのAを思い出した。
よく笑い、よく歌い、よく踊る。
心優しいAは、庭の動物たちとも楽しそうに会話していた。
パタパタと庭を走り回り、遊んでいる姿を思い出し懐かしく思う。
あのころのAが戻ってきたような気がした。

ふと、Aの前に跪いて笑顔を向ける男が見えた。
Aは笑って手をとり、その男と楽しそうに踊り始める。

「…あれは、誰だ」

「ゼン第二王子の側近だそうですよ」

「ほう…。で、なぜAと」

「白雪姫様の想い人のようです。」

「ほう…。……えっ！？」

王様は驚いて、答えた側近を見つめた。
側近の男は面白そうに笑う。

「白雪姫様が話してくださいました。ブレスレットをしていましたでしょう？」

「あれか…とても綺麗で似合っていたが…」

「それも、もらったそうで。…楽しそうですね、白雪姫様」

「……そうだなぁ。」

大事な愛娘に想い人がいたとは驚きだが、Aの世界は輝いているようだ。
幼い頃の笑顔を取り戻し、楽しそうに会話するAを嬉しく思う。
これまで城に閉じ込めるように大切にしてきたが、それは間違いだったのかと考える。
何よりも大事で、失いたくなくて城から出さなかった。
それ故に、他の人間を知らずに王妃を信じてしまったのだろうか。
そう思うと、自分のしたことに後悔する。

「王様…後悔していらっしゃいますか？」

「…わかるか？私は白雪姫を大切にしてきたつもりだったが…違ったのだろうか」

急に黙り、暗い顔をした王様に気が付いた側近が声をかける。
側近は王様に笑顔を向けた。

「いいえ。白雪姫様はとてもお優しく、真っ直ぐな子です。王様が大切にしてくれていること、わかっていますよ。」

「そうなのか…？」

「もちろんです。わかっているから、ああやって笑っているのです」

「そうか…そうだな。これからは、あの子の好きにさせてあげようか」

「えぇ、それも良いと思います。」

光を取り戻した王様。
側近も安心したように笑う。
二人は、楽しそうに笑う白雪姫を見つめるのだった。

次の日、ゼン一行を見送る際にAを送り出すことに決めた王様。
Aはゼンと共にウィスタル城に行き、オビと共に過ごすことを決める。
それぞれが幸せの道を歩きだす。
王様は、信頼できる側近達、兵士たちと共に王城で楽しく暮らしていくのだった。