赤髪の白雪姫と黒髪の白雪姫 (ページ30)

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番外編：白雪姫のお父様ページ30

「お父様、私、王妃様に殺されました」

白雪姫のその言葉が、頭を強く殴られたような衝撃だった。
仲良くやっていると思い込んでいた王様。
今まで王妃に騙されているのか、と気付き王妃への怒りと、気が付かなかった自分への怒りで目の前が真っ赤に染まった。

怒りに身を任せて王妃の元へと向かう。
だが、部屋にはおらず、王妃の側に置いていた兵士に王妃を連れてくるように命じた。
そうして連れてこられた王妃は絶望した表情を浮かべていた。

「王妃…お前が白雪姫を殺そうとし、森へと追いやったのか」

「……」

「兵士に命じて殺そうとしたのだな？…なぜだ」

「…この世で一番美しいのはわたくし。白雪姫は邪魔だからよ！」

ほぼ逆ギレの王妃様。
その目は怒りと嫉妬に燃え、これまでの王妃とは思えぬほど醜い表情だ。
王妃の言葉に、王様は激怒する。

「王妃…いや、お前はもう王妃ではない！娘を殺そうとしたこと、許さんぞ！」

王様は兵士に王妃を拘束し、遠い遠いところへ追放することを命じた。
魔法の鏡を失った王妃はもう魔法の力もなく。
残された魔法の鏡の破片も燃やされ、すべてが無くなった。

そして白雪姫が生き返ったお祝いに夜会を開くことにした。
着飾った白雪姫を前に、あの冷たさを思い出す。
だが目の前にいる白雪姫は頬に赤みが戻り、ふふっと笑っていた。

「白雪姫…いや、A。」

「お父様…」

「本当に、本当に…よかった…」

「ふふふ、もう何度も聞いたわ！」

踊りましょう？と白雪姫に言われ、王様は白雪姫の手を取った。
くるくると楽しそうに踊る二人。
その光景はとても美しく、まるでお伽話のようだ…と後に語り継がれる。
二人だけの世界はとても楽しい。
だが、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。

「A、行っておいで。」

ちら、とゼン達のほうを気にしていたのを先ほどから気付いていた。
行きたいのだろう、と王様はAの背を軽く押す。
驚いた顔をした後に、嬉しそうに笑った。

「お父様…ありがとう、いってきます！」

とても嬉しそうにゼン達の元へと駆けていく。
その後ろ姿にすこし寂しく思った。

「…王様、寂しそうですね？」

「……」

側近に言われ、むっと眉間に皺を寄せる。
だがすぐに笑った。

「娘を嫁に出す気分だったよ。でも元気なのが一番だ」

「えぇ、そうですね…。私も白雪姫様が元気で嬉しく思います。」

側近もとても安心したように笑う。
よかった、と二人で笑った。