番外編:白雪姫のお父様 ページ29
馬車に乗り、自国の城へと帰る道中。
白雪姫はウィスタル城でどのように過ごしていたか、どれだけ楽しかったかを話していた。
「それでね、お父様。木登りができるようになったのよ?」
「ほう、それはすごい。でも怪我はしなかったのか?」
「少し手を擦りむいたりしたけれど、白雪がすぐに手当してくれましたの。だから傷跡も残っていませんのよ」
ふふ、と笑って白雪姫は王様に手のひらを見せた。
そこは依然と変わらずとても綺麗な白魚のような手だ。
王様はその手を取り、そっと握りしめる。白雪姫の体温に再び安心してため息をついた。
「お父様?」
「元気なのはいいが、怪我には気を付けるんだぞ」
「はい、わかりましたわ」
お父様は心配性ね、と笑う白雪姫。
その手にキラリと光る鈴が目に入った。
「ん?それは、どうしたんだ?」
「これ…これは…っ」
白雪姫はプレゼントしてもらったブレスレットに触れる。
オビのことを思い出し、ほんのり頬を染めた。
赤い頬の色が広がり、ほわほわと周りに花が飛んでいるような錯覚に陥る。
恋をした乙女の表情が、この世の者とは思えぬほど美しかった。
「そうか、大切なものなんだな…」
「え、えぇ。とても大切ですの」
何も言わずとも王様にはわかる。
とても良い出会いをして、大切なものを手に入れたのだろう。
少し寂しく思ったが、王様は白雪姫の成長が何よりも嬉しかった。
――***―――***――***―――***――
それから城に到着し、白雪姫に休むように伝えた。
その判断が凶となってしまい、白雪姫が倒れたと伝えられる。
駆け付けた時には既に遅く。愛しい白雪姫の体は冷たくなっていた。
悲しみに暮れ、それからどう行動したのかほぼ記憶にない。
きっと亡き妻の時のように葬儀の準備をしたのだろう。
悲しくて悔しくて、心の中がぐちゃぐちゃだった。
数日が経ち、ウィスタル城の第二王子たちが到着する。
第二王子、ゼンの顔を見ると白雪姫の笑顔を思い出した。
あんなに笑っていた子がなぜ…と再び悲しくなったが、お別れしたいというゼン一行を快く迎え入れた。
白雪姫が眠る元へと案内するよう、兵士に命じる。
それから事態が急変したのはすぐあとだった。
”白雪姫が生き返った”
その事実はとても信じがたく、夢でも見ているのか、現実逃避をして自分の頭がおかしくなったのかと思った。
だが、白雪姫の元へ駆けつけてその声を聴いたとき、悲しみで灰色だった世界が明るく色付いた。
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作者名:Lily | 作成日時:2018年2月16日 1時