【H×H】 彼女が蜘蛛の中枢にいる理由 ー出会い編1ー

No.5 【惚れたのはどちらが先か】 ページ18

ーーマチsideーー


最初から違和感はあった。

あの瓦礫の山の中であの子を見つけた時。



……彼女が振り向いた瞬間、シャルのオーラが乱れた。


何をしてもその表情を崩さないあいつが、たった一人の少女の存在で感情をかき乱されていた。



ーーー鬼の霍乱ってとこか。




そんな事を考えつつ、向かうはパクの部屋。



「パク、入るよ。」
そう声をかけて、部屋の中へと入る。


部屋の勝手はわかってる。

勝手にソファーに座り込み、隣にいるパクへ話しかける。





「ねえパク。シャルが………一目惚れってありうると思う？」



そう言葉を投げると、読んでいた本を閉じるパク。
どうやら興味を持ってくる事には成功したようだ。



「……あの子の事？」
「あの子を見た瞬間、シャルのオーラが乱れた。それに…あの子に向ける笑顔は多分作ってない。
まあただの勘なんだけどね。」



あいつは自分の容姿を利用して行動する事が多い。
まあある意味正解だよね。ムカつくけど。


だから、あいつが外へ見せる表情の多くは計算しつくされたもの。

確実に相手を落とすためのトラップ。




だけどあの子へはそういう作為性を感じなかった。




「確かにね。いつものシャルだったら、答えない相手を優しくリードなんてしない。
普通に脅すか………それなのにあの子には、安心させるっていう手法を使った。」
「どういう事？」
「普通、情報を得るためには脅すか、安心させるかっていう二つの手法があるの。
普段シャルが使っているのは前者。だけどこの方法だと情報を引き出した後は
………まあ敵として認識されるわね。」




そう言うと、パクは気だるげに息を吐いた。

そこまで言われると言いたい事の半分ぐらいは読み取れる。



つまり……


「時間はかかっても、安心させた状態で情報を出せれば敵対関係は生まれない。ってこと？」



そこまでしても、彼女に敵として認識されたくなかった。
それはどういう事かというと。





「……珍しい事もあるものね。シャルが一目惚れ、か。」





そう言いながら天井を見上げるパク。
そうしたい気持ちはとてつもなく分かる。



偽物の笑顔で騙し続けてきたあの男が。




ーーーまだ恋なんて感情を持っていたとは。



だけど変なところ不器用なんだよな。



「……絶対自分じゃ気づいてないよね。」




他人の感情には誰よりも敏感なのに、自分の事となると途端に鈍くなる。

しばらく観察するのも面白いかも。

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