【実I況I者】フェロモンとやらが欲しいのです。【fj】

#6 まるで輩 ページ6

「30分も遅れちゃった…急がないと、」




両手に有り余るほどの大荷物を抱え、うんしょと坂をあがる。


ビニールの安っぽい袋の中にはカジュアルな服に、自分が愛用しているシャンプーとコンディショナー、ハンドクリームにワックス…と、数多くの生活用品あれこれが入っている。

いろいろ物色してこれも必要かな？！でもあれも必要だな？！なんて考えてたらとっくに約束の6時を過ぎていた。ひっっっじょーに申し訳ないことをしたと思ってます。ﾊｲ。





「フジくんどうなってるかな…」



わくわくしながら店の前の急斜面の階段をのぼる。

誰かをイメージチェンジさせるなんてゲロがでるほど面倒くさいこと、だーれが引き受けるか！…なんて否定的に思っていたわたしが今では馬鹿馬鹿しい。
…まああのときは土下座の気迫に負けてOKと言わざるをえなかったけれど。

現に今、"誰かを変えること"に関して確かな高揚感がわたしの中に芽生えているのだから。これは勘違いなんかじゃないよね。



そうこう考えてるうちに、お店の前へと戻ってきた。
ちょっとした希望とほんのちょっぴり不安を抱えながら、また弾むような音のなる鈴を揺らした。





「佐々木さん！遅れちゃってごめんなさ…」

「おーおかえり！遅かったな！」

「！
おっすー」

「………え」




佐々木さんの隣に立っている人に、私の知ってるフジくん(知り合って1日)はいなかった。
いるのは…髪の毛を茶髪にした輩っぽいイケメン。



えっ…ホントにフジくん？？？




「え、フジくん…なの？」

「ん？俺？


いや違うけど」

「えっ」

「ごめんA。こいつ俺の友達。

フジくん今トイレだわ」

「び、びっくりした…」




なんだ。やっぱりフジくんじゃなかったのか！！！
焦った。あんなヘタレそうな藤谷紫くん(17)が髪切っただけでこんなガラ悪くなるなんて、魔術でもかけられたのかと思った。


なんて失礼なこと頭のなかで膨らませていると、気づいたのか輩のお兄さんが睨みを聞かせて突っかかってくる




「おいお前！俺見てぜってー失礼なこと考えてただろ！」

「Aに突っかかるのやめろって！ただでさえそんな髪型と目付きで怖がられるくせに」

「…るせー！うっしーは黙っとけ！」

「それそっくりそのままお前に返すわ！」




…何やら言い合いが始まった。

賑やかだなぁ。そう思いながら加担はしなかった。
2人の会話を横目に、私はただフジくんがどうなったか、それを待ち望むばかりだった。

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