#20 遭遇 ページ20
「…あれ、まって。ない、ない！」
別館4階にある視聴覚室を出て、丁度半分まで階段を降りていた時、
ヒラくんはかばんをまさぐってそう言った。
私がどうしたの、とたずねると
定期を落っことしたと一言。…そりゃ大変だ。
「ごめんAちゃん、先に行っててくれないかな？」
「え、私も探すよ？」
「ううん、心当たりならあるからすぐに見つかるはず！だから大丈夫、下で待ってて？」
「…わかった、じゃあそうするね」
先に帰らないでね？とおねだりするような可愛い声で私に呼びかけて釘を刺し、パタパタと効果音が付きそうなくらい軽やかな足取りで階段を上っていく。
元気だなぁ、私もう階段上がる気力なんてないや…帰宅部ですし……おすし……
羨ましいなという目線で目を細めてヒラくんが上っていった方向へ眼差しを向けたあと、
また目線を下のフロアへと戻し1階へ駆け下りていった。
「…え、」
「…あ、やっと来た！」
＿＿＿そこにフジくんがいるとも知らずに。
「フジくん…てっきり帰ったと、」
ぽつり、私がそう話すと口角を少しあげて嬉しそうに微笑まれる。
その笑みは愛想笑いでない、
愛梨ちゃんと一緒…いや、まだ見た事のない、
優しい笑みだった。
…なにそれ、期待しちゃうじゃない。
折角ヒラくんによって取り除かれたモヤモヤが、また徐々に募っていくような、そんな気がした。
「Aちゃんのメッセージ、なんか違和感あるように感じて。了解なんて打ったけど気になって気になってずっと仕方なかったんだ〜
文化委員になったから今日は無理だ、って連絡来たけど俺も話したいことがあったし、先生に呼び出されてたから時間的にも丁度いいかなって。で、待ってたってわけ！」
「そ、うだったんだ」
…どうしよ、ヒラくんと帰る約束してるのに。
私が脳内で慌てているとは露知らず、フジくんは｢さ、行こ？｣と言って私の手を引く。
…まずい。ダブルの意味でまずい。
｢あ、あの、フジくん、ちょっと今日は、｣
｢…あれ、…藤谷くん？｣
あわてて断りかけたその時。
澄んだ可愛い声が、後ろからそっと聞こえた。
フジくんはそちらへ顔を向け、はた、と目を丸くする。
｢君は…平塚くん、だっけ？｣
｢………うん！そうだよ｣
にこぉ、と目を細め微笑むヒラくん。
その様子を見て、ああやっぱり可愛いなぁと自然に頬が緩む。
…けれどフジくんは眼光を鋭くして、
訝しげにヒラくんを睨んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 422人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あかぺそ(プロフ) - 美桜さん» 何度もコメントありがとうございます！！！ここまで来てリメイクになってしまって、美桜さん含め読者様には本当に申し訳がありません……; ;更新停滞するかもしれません、本当にごめんなさい、コメント励みに頑張って行きたいと思います！！ (2017年3月17日 7時) (
レス) id: c61139b82a (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 全部フジ君視点？は、何それ、最高すぎぃ！とても楽しみにしてます。大変かと思いますが、無理せず頑張って下さい笑 (2017年3月16日 13時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
あかぺそ(プロフ) - ai_さん» コメントもお褒めの言葉もありがとうございます！｢すごく好き｣と言っていただけて私自身とっても嬉しいです〜！！ありがとうございます; ;早めの更新もできるよう、日々頑張ります！ (2017年3月15日 7時) (レス) id: c61139b82a (このIDを非表示/違反報告)
ai_(プロフ) - この作品すごく好きです。リメイクも楽しみにしていますね。これからも更新頑張ってください！ (2017年3月14日 18時) (レス) id: baf56b1030 (このIDを非表示/違反報告)
あかぺそ(プロフ) - 美桜さん» 返信が遅れてしまい申し訳ないです；；ありがとうございます！引き続き頑張っていきたいと思います＾＾ (2017年3月14日 3時) (レス) id: fbf3dd707b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
