35 ページ35
…事の発端は、たしか真夏のあの日だった。
ーーー
｢ん〜…キヨ遅いなあ…｣
付き合って3年になった私とキヨはその日、デートする約束をしていた。
意中の相手のトーク画面を開いたまま、公園のベンチに腰掛けて。
"すぐ行くから待ってろよ"
そんなチャットで止まった会話を、私はただ眺めてた。
…文章が来てから2時間半。
キヨの遅刻魔は前々から分かっていたけれど、まさかこんなにも遅刻するなんて。
嫉妬深いくせして堂々と遅刻するだなんて、その間に浮気してもいいって遠回しに言ってるようなもんじゃない？しないけど。
｢もー…待たせすぎ｣
ぶーぶーと文句を垂れながら携帯をひたすらいじっていたら。
｢あろ、
もしかして…Aちゃん！｣
｢…、え？｣
｢こんなとこで何してるんー？｣
少し遠目に聞こえてきた鼻声。
私はふとそちらを向いた。
｢あ、えと…レトルト、さん？｣
｢そそ！覚えててくれたんやね｣
声をかけてくれたのはキヨの親友のレトルトさんだった。
数えるほどしか面識がなかった上にちゃんと話した事がなかったから、声をかけたことを不思議に思った。だけど同時に、嬉しくも感じた。
｢キヨと2時間半前に待ち合わせしてたんですけど…全ッ然来なくて。あはは｣
｢えぇ！待たせすぎやろ！
何やっとんのよキヨ君は…｣
服選びにでも手間取ってるんですかね、なんて軽く冗談を言うとそれはちゃうやろ、と笑い
ベンチにヨイショと腰をかける。
つかの間の和んだ雰囲気。
落ち着くなぁと長いため息をついて空を仰ぐと、レトルトさんはなぁなぁと私に声をかけた
｢Aちゃんさえ良ければやけど…今から家に来ん？｣
｢…え？｣
｢いや、今まで全く喋ってこんかったし…！キヨくんが来るまでの暇つぶし、ってことで！どうかな？な！｣
顔の前でお願いポーズをして、そう言う。
キヨが来るまでの間…という甘い言葉とキラキラした表情にやられて、私は迷うことなく"yes"を出した。
するとレトルトさんは更に表情を明るくさせて、やった！じゃあはよいこ！と私の手をひいてスキップしだす始末。
その姿に可愛いなぁと感じながら、私は楽しみやなぁ！と大声ではしゃぐレトルトさんのあとを、小走りについていったのだった。
その時浮かれていた私は、レトルトさんの｢楽しみやなぁ｣という言葉が別の意味だったことに
全く気づいていなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あかぺそ(プロフ) - ☆mio☆さん» ありがとうございます！！なんとか完結できて嬉しい限りです…＼(^o^)／本当ですか？！？！ありがとうございます！！！需要がお一人でもあればもう書こうと思ってたんでもうmioさんのためだけに書きます書きます・ヮ・ 完結祝コメント、本当にありがとうございました！ (2016年11月6日 15時) (
レス) id: af7846be1f (このIDを非表示/違反報告)
☆mio☆(プロフ) - 完結おめでとうございます！！いつも楽しく読んでました(*^^*)番外編、需要ありますよ(((´°ω°`)))ぜひ書いてほしいです！！ (2016年11月6日 14時) (レス) id: b33f5bcf6c (このIDを非表示/違反報告)
あかぺそ(プロフ) - サランラップさん» わー！！！ありがとうございます(；＿；)(；＿；)これからも精進していきますね＼(^o^)／ (2016年8月17日 8時) (レス) id: 61640206a2 (このIDを非表示/違反報告)
サランラップ - とっても面白いです！これからも頑張って下さいね!(*´ω｀*) (2016年8月15日 20時) (レス) id: d0d035ab2d (このIDを非表示/違反報告)
あかぺそ(プロフ) - 梅坂さん» 梅坂さん、ありがとうございます(^-^)/♪面白いと言っていただけて凄く光栄です…！良かったらまた定期的に見に来てやってください( ´,_ゝ`)これからも梅坂さんのコメント励みに頑張って更新していきますね！！ (2016年6月27日 20時) (レス) id: 61640206a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
