霞柱と氷の歌姫 第二ノ歌

薔薇の髪飾り ページ11

其処に書いてあったのは…
特に何もなし。
赤眼や昔氷華家がどんなことをしたのかという簡単な歴史を語っている本だった。

貴『何の為に此処まで来たんだ…』
無「其処にあるもう一つの本は読まなくていいの？」

忘れてた。
読んでみるか。

『1月24日

今日夜に下の街まで女目当てで出かけていたら、目が六つもある人間に出会った。

其奴は俺に鬼にならないかなどと聞いてきた。
話を聞いているとそう悪い条件ではなかった。
人以上の力を手に入れられるのだ、こんなに嬉しいことはない。

其奴の名は、黒死牟と言うらしく血を沢山飲まされた。
途轍もない痛みが走ったが、それが治ると明らかに今迄にはない感覚に襲われた。

人間が美味そうに見える。
黒死牟は「此処では…鬼狩りに…見つかる。人目の…つかない場所で…食え」
と言った。
人目のつかない場所といえば家だ。

山の奥でしかも化け物が出ると噂されているので確実に気づかれない。
家族なんてどうでもいい今は兎に角空腹を満たしたい。

俺は家に行くとすぐに家族を殺 して食った。
口の中いっぱいに広がる血の味。
美味い。

次女のAが此方を見ていた。
殺 そうと思ったが気が変わった
こいつがもし生きて俺の元に復讐しに来たらどれだけ面白いだろう。

想像しただけで胸が踊る。
Aを気絶させ街に捨てる。

そうだ、せめて氷華家の薔薇の髪飾りだけでも玄関に置いておこう。
俺が殺 したという証拠のために。

黒死牟が彼の方というものを紹介してくれるらしい。

此処にはもう二度と戻ってこないが、Aの記憶が戻った時のためにこの日記を本棚の上に置いておく。

絶望してくれるといいな。』



巫山戯んな。
クソが。
人の命を奪っておいて！

無「酷いね…」

隣を見ると流石の無一郎も引いていた。

玄関に飾ってある薔薇の髪飾りか。
見に行こう。

私は玄関に小走りで行く。
すると奥の方に右から赤い薔薇と青い薔薇と紫の薔薇の髪飾りが飾ってあった。

其々、姉さん、怜、母様の髪飾りだ。

貴『紅羽…いる？』
紅「アア、イルゾ」
貴『私の最終戦別の時に壊してしまった薔薇の髪飾り…ある？』
紅「アア、オ館様ノゴ厚意デ修復モシテアル」
貴『それ頂戴？』
紅「…ワカッタ」

私は血塗れの家族の形見を手に取り、玄関に飾り直した。
改めて見ると家族の顔が鮮明に思い出し涙が出てくる。
私は膝から崩れ落ちずっと泣いていた。

その時に無一郎が背中を静かに撫でていてくれたことがとても落ち着いた。

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