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4話 ページ6

先輩は驚いたような顔をして、スマホのディスプレイから目を離し私を見た。

『…あ、何でもないです。帰るのめんどくさくて。…さて、酔い覚めてきたので帰りますね。』

ご迷惑お掛けしてすみませんでした、本当にありがとうごさいました、と言いながら立ち上がって、さてタクシーでも捕まえるかなんて思いながら先輩に背を向けて歩き出そうとした。

「いいね。確かにこんな時間に帰るのもなんかめんどくさくなってきたし、」

『え?…うわっ…!』

突然腕を掴まれて、引っ張られる。

「俺も帰りたくなくなってきちゃった。」

にっこりと笑う先輩の目がふいにネオンに反射する。

アルコールに浸った自分の脳でもその言葉が何を指してるかなんて容易に理解できてしまって、私はただ息を呑んだ。

**

その後ホテルに入ってからはもうこれでもかというくらいのゴテゴテのお決まりの展開。

ベッドの上で戯れているうちにいつの間にか寝てしまっていて、目を覚ませば、昨晩のアルコール過剰摂取による頭痛を伴って朝がやってきた。そして冒頭に至る。

あの時自分が酒に酔っていなかったら、こんな事にはならなかったのだろうか。

今の状況を全部アルコールのせいにして、朝起きて何度目かもわからないため息を吐く。

『どうしよー…。』

「どうしようもなくない?」

突然自分の独り言に対する返答が返ってきて、思わず肩を揺らす。声がした方を見ると、先輩が起床早々スマホをいじっていた。

『…おはようございます。いつの間に起きられたんですね。』

「おは。知り合いにランク抜かれる夢見て飛び起きた。」

『夢の内容って誰かに話すと正夢にならないらしいですよ。』

「マジか。じゃあ俺一生ランク抜かれなくて済むわ。」

そう言って先輩はスマホを置くと、はぁ、と小さくため息を吐いた。

「酒って怖いわ。」

『…先輩。昨日の無礼非礼の数々お詫び申し上げます。すみません。』

「うちの部署で一番真面目で淑やかって噂の速水Aがアルコール入ったら、帰りたくないなんて言い出すんだから怖いよな。」

『すみません本当…。本当…申し訳ありません…。』

ベッドの上で同じ布団に入りながら、意地悪く笑いながら嫌味を言う先輩とひたすらに羞恥心と罪悪感に浸りながら謝る後輩。

1週間ぶりの仕事に縛られない土曜日の朝は、そんなムードのかけらもないピロートークにより過ぎて行った。

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雪乃(プロフ) - 消しゴムさん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2017年7月31日 3時) (レス) id: 66c51cba16 (このIDを非表示/違反報告)
消しゴム - 更新楽しみにしてます(*^◯^*) (2017年7月30日 8時) (レス) id: 4a07a21d32 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪乃 | 作成日時:2017年7月25日 8時

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