27話 ページ32
学生時代、私は学校が嫌いだった。
毎朝早く起きて制服を着て登校する朝も、全くもって面白くない授業をずっと受ける昼も、学校から帰ってすぐにベッドに倒れ込む夜も全部嫌いだった。
楽しくなかった、なんて言えば嘘になるけど、どちらにしろもう戻りたくはない。
だから私ははやく大人になって学校から解放されたかった。その為に死にものぐるいで勉強して、いい会社に入った。
それなのに、やっぱり朝早く起きて、つまらない日中を過ごし、帰ったら即ベッドに飛び込む夜は変わらない。
どうやら、私の嫌いなものは3つある様だ。1つはパクチー。2つ目は虫。そして最後の1つは勉強と労働。1つ目と2つ目は努力すれば避けられるが、3つ目は真っ当に生きる為にはどうしても避けられない。
だから今日も今日とて「明日を生きる為」と自分を奮い立たせて、せっせと会社に貢献しているわけなのだが、
「ちょっと、速水さん。さっきお願いした仕事終わったの?」
『はい。書類は課長のデスクに置かせていただきました。』
「終わったなら報告するのは基本でしょ?わざわざ聞きに来させないで。」
『先程御報告はさせていただいたし課長から承認もいただいたはずなのですが。』
「私はそんな記憶ないけど。もし報告してくれてたとしても報告が甘いわ。今後こんなことはない様にしてください。」
『……すみません。』
そんなただでさえ嫌いな職場に、更に面倒でムカつく上司がいたら、本当たまったもんじゃない。
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『課長絶ッッ対私のこと嫌いですよね。本当ムカつく。いちいち突っかかってくるし、あの人の更年期いつ終わるんでしょうか。』
「俺の入社前からあんな感じらしいけど。」
『え、慢性更年期なんてあの人本当いいとこなしじゃないですか。私もあと30年して更年期になったらあんな風になっちゃうならその前に死んだ方がマシです。』
「クソ過激発言笑う。」
向かい側の席でそう言って笑って、日本酒に口付ける男に『笑い事じゃないくらい嫌われてるんですけど』と言えば、先輩は更に笑った。
「可哀想なA、そんな君に朗報だよ。明日はお休みで上機嫌な茅ヶ崎先輩が大ジョッキ奢ってあげる。」
『え、本当ですか!?やったー!すいませーん!大ジョッキ!アサヒで!』
大喜びで居酒屋の店員に注文して、やっぱりこの時間はいいな、なんて改めて思う。
自分も知らない間に、先輩と飲む金曜日のこの時間は、嫌いな職場で頑張る私へのご褒美の様になっていた。
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雪乃(プロフ) - 消しゴムさん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2017年7月31日 3時) (レス) id: 66c51cba16 (このIDを非表示/違反報告)
消しゴム - 更新楽しみにしてます(*^◯^*) (2017年7月30日 8時) (レス) id: 4a07a21d32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪乃 | 作成日時:2017年7月25日 8時