23話 ページ27
ナンパの男から離れて歩いて行った後先輩はショッピングモールや美味しいケーキ屋さんに連れて行ってくれた。
「ごめん、マジで。」
ストリートACTを最後まで見れなかったのがちょっと残念だったな、なんて思いながら歩く日が暮れ出した帰り道。駅に向かう途中で先輩は私に謝ってきた。
『え?何で謝るんですか?』
「…お詫びのつもりで一緒に出かけたのに、放置プレイした挙句ナンパされるとかないわって感じでしょ。」
『放置プレイ…。』
言葉のセレクトどうにかならないのか、なんて心の片隅で考えながら口を開く。
『個人的には今日楽しかったですけど。茅ヶ崎さん私の行きたいところに連れて行ってくれたし。』
まあストリートACTはもうちょっと見たかったんですけど、と付け足して笑う。
『まあナンパごときで怯みませんよ。それにナンパされたのちょっと嬉しかったし。』
「え、普通に何で?」
『いや、なんか今日私そんなに魅力的だったのかなって…。…何ですかその顔。』
「うわ嘘だろって顔。」
『ちょっと。』
私の怪訝な顔を見ると先輩は可笑しそうに笑った。
「本当、なんていうか…気が抜ける。」
『…それ褒めてます?』
「どうだろうね。」
沈みかけた夕日に照らされた先輩の不敵な笑みを見て少しだけ安心する。さっき私に謝ってきた時は少し沈んだ顔をしてたから、いつもの笑みに戻ってよかった。
夕日が地平線の向こうに消えかかって行く様な時刻に駅前の広場に到着し、先輩の方へ向き直る。
『朝まで飲むのもいいですけど、たまにはこんな風におしゃれな街で2人で出掛けるのもいいですね。また誘ってください。』
茅ヶ崎さんと2人で出掛けるの楽しかったですし。と付け足して笑うと彼は驚いた様な顔をして、王子様の様な笑みを頰に浮かべた。
「近いうちに必ず。…じゃあ、また明日。会社で。」
その言葉が合図の様に私は駅の方へ、先輩は元来た道の方へそれぞれ別れて行く。
…変なの。カバンの中から定期券を取り出して改札に入ろうとした時、一瞬だけどここで先輩との休日が終わるのが名残惜しく思えた。
思わず先輩が行った道の方へ振り返ろうとしたけど、それをしたら何か負けた様な、認めたくないものを認めてしまう気がして。
そのまま振り返る事もせず私は帰りの電車に乗り込んだ。
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雪乃(プロフ) - 消しゴムさん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2017年7月31日 3時) (レス) id: 66c51cba16 (このIDを非表示/違反報告)
消しゴム - 更新楽しみにしてます(*^◯^*) (2017年7月30日 8時) (レス) id: 4a07a21d32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪乃 | 作成日時:2017年7月25日 8時