16話 ページ19
「あ〜、なんなのマジ。あのクソ上司。俺にめんどくせえ仕事押し付けてきやがって。」
『茅ヶ崎さん…飲み過ぎですって。』
数時間前にスタバでコーヒーを飲む姿が様になっていた茅ヶ崎至は何処へやら。本日2杯目のウーロンハイを飲み干しテーブルに突っ伏した彼は「明日休みだしヘーキ」と、3杯目になるウーロンハイを頼んだ。
詳しい事情はわからないがどうやらここ数日の間、上司に仕事を押し付けられて毎日残業だったらしい。
「あのクソ上司…。なーんであいつが定時で帰ってんのに俺は夜おねんねする時間まで働いてんだよ。俺だって定時に帰ってゲームし〜た〜い！」
『でもそう言いつつ仕事は全部終わらせたんですよね？』
「またいつ押し付けられるかわかんないけどね。」
先輩はそう言うと突っ伏した状態から元に戻って頬杖をついてこちらを見た。アルコールのせいで少し紅潮した顔も眠そうに目を細める顔も、どの瞬間を切り取ってもこの人の顔は綺麗だ。
「あいつ今タンスの角に小指ぶつけてればいいのに。その痛さゆえに休職すればいい。」
言うことは全く綺麗じゃないけど。
「ねえ速水ー、心身共に疲労したこの憐れな先輩を無条件に褒めて。」
『え？』
「さんっにーいち！はい！」
『え…。』
凄い酔ってる。まあそりゃそうだ。まだ店に入って2時間も経ってないのにもうウーロンハイ3杯目だし。
3ヶ月ほどの短い経験からだが、酒に酔った先輩が褒めてと言っている時に褒めなかったら後で凄く拗ねるのは目に見えている。
『…茅ヶ崎さんは凄く、偉い方だと思います。』
ジョッキに残っていたビールを一気に飲んで、拗ねられたくないし、と仕方なく口を開いた。
『文句ばっかり言ってやるべき事をやらない人っているじゃないですか。でも先輩は、まあ今はちょっと愚痴っぽいですけど、その時は文句一つ言わずにゲーム時間とか睡眠時間とか削って本来やらなくていい事までやり切った。』
途中から先輩の顔を見て話すのが恥ずかしくなり、目を逸らす。
『社会人として当然なのかもしれませんけど、すくなくとも私は凄いと思いますし、尊敬します。だから無条件で、なんて付けないで下さい。』
思っていた事をそのまま話した。ああ、結構恥ずかしいななんて思い、向かい側に座る先輩を見る。
『あれ？どうされました？』
「…なんでもない。ありがと…。」
片手で顔を押さえ下を向く先輩は、何かを押し殺す様な声でそう返した。
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雪乃(プロフ) - 消しゴムさん» コメントありがとうございます！頑張ります！ (2017年7月31日 3時) (
レス) id: 66c51cba16 (このIDを非表示/違反報告)
消しゴム - 更新楽しみにしてます(*^◯^*) (2017年7月30日 8時) (レス) id: 4a07a21d32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪乃 | 作成日時：2017年7月25日 8時
