12話 ページ15
…………え?あれ?
私、今、先輩にキスされてる?
思考停止した脳が遅れて現状を把握する。車を出ようとしたら手首を掴まれて、そのまま引っ張られて、そのまま、キスされて。
『ちがさ、さ…っ』
やっと頭が働いてきて、今更抵抗を始めるけど先輩の左手は私の手首に右手は後頭部に添えられていて、逃げようとしても離してくれない。
一瞬だけ押し付けられた唇は離され、またくっつけられて、また離されて、たまに下唇を咥えられて。
初めのうちは抵抗していたがその内抵抗する気力も根こそぎ削がれて、言葉に出来ない、快感の様なものに押し流されて。もう頭の中が真っ白になってしまって。
ただただ、唇の熱さに溺れた。
もしかしたら助手席に乗り込んだ時から、オフィスから急いで走って駐車場に向かった時から、社員食堂の前で先輩に待ち合わせ場所だけ指定された走り書きのメモをもらった時から、私はずっとこんな展開を期待していたのかもしれない。
あの夜の事を全部お酒のせいにして、自分が本当はあの日どんな思いで先輩と2人で夜を明かしたのかを考えない様にしていたのかもしれない。
そんな考えが生まれては快感で掻き消され、生まれては掻き消される。
何でもいい。そんなまどろっこしい事を考えたってしょうがないじゃないか。
『…家、上がっていきますか?』
唇が離されしばらく車内に流れた甘い沈黙をそんな言葉で破れば、先輩は同意の言葉の代わりに微笑んだ。
今日の夜の事は、アルコールのせいには出来ないな。
与えられた熱で溶けた思考回路で、ふとそんな事を考えた。
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雪乃(プロフ) - 消しゴムさん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2017年7月31日 3時) (レス) id: 66c51cba16 (このIDを非表示/違反報告)
消しゴム - 更新楽しみにしてます(*^◯^*) (2017年7月30日 8時) (レス) id: 4a07a21d32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪乃 | 作成日時:2017年7月25日 8時