Stardust noise (ページ4)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,211 hit

『遺された己』ページ4

.

.

___パチリ

意識が浮上する。スイッチを切り替えるみたいに全神経が身体を繋ぐ。微睡みもすぐになくなり、暖かく温い布団から這い出した。

「ふぁっ…」

生理現象のような欠伸を零し、着ていた寝間着を脱ぐ。パチンと指を鳴らし意識を集中させれば、すぐに自分の身体にいつもの服が纏われる。
魔法少女になってから服の着替えが楽になったのは徳の一つだろう。
その上から部屋着である黒のカーディガンを羽織り、皆が集まる広間へと向かった。

魔法少女として目覚めた私が身を寄せたのは、とある小さな教会が運営している孤児院だった。
なんでも、死んだ父と顔見知りだった院長が私を引き取りたいと強く要望したからだ。
そのまま孤児院に引き取られた私は、孤児院では小さな子たちの面倒をみる姉として、そしてバケモノから皆を守る魔法少女として日々を送っている。

「あ、渚姉ちゃんおはよう！！」

孤児院の一員である少女が元気にこちらへ向かい、恒例と化したハグをしてくる。ハグを仕返せばキャッキャと嬉しそうな声を上げる。
魔法少女になってから、自分の名前を呼んでくれる人は孤児院の皆と院長さんしか居ない。それでも本当の名前を呼ばれるのは嬉しいものだ。

「おはよ、ひとりで起きられたんだねエライエライ」

「えへへっ！あ、もうごはんできてるよ！！早く行こう！！」

グイグイと引っ張られ、朝食のいい匂いのする食堂へと進む。

魔法少女になった日、全てを喪ったと思ったが、まだ自分には残っていたらしい。

(あと、1年…)

今の自分は16歳。18歳になれば魔法少女の力は失われてしまう。残された時間はあと1年だ。
時が過ぎれば、護る存在から護られる存在になってしまう。

(それまで…頑張らないと)

力がある限り、ここにいる皆を護りたい。助けていたい。院長に恩を返したい。

.

.

.

護る存在のまま、死ぬことが出来たら

それは、きっと私にとって幸福な死に様だ

(なんて、言ったら怒られるだろうな)

お姉ちゃん？と首を傾げる子になんでもないと首を振る。

「いこう。ごはんなくなっちゃうよ」

護りたいと思いながら死に場所を探している私を愚かだと笑うように、チリン…と鈴の音がどこからか聞こえた。