壱【弟視点】 ページ2
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すっかり夏の景趣に慣れて来た頃。
バタバタと廊下を走る音に耳を傾ければ、音の主であろう乱が勢いよく障子の戸を開けた。
「わ、わわ、若ー!!」
頬を気丈させ、肩で息をする乱に少々後ずさりながらも「どうかしたか?」と問いかける。
「当たった!!いち兄が当てたよー!!」
グイッと目の前に突きつけられる長方形の紙。そこには可愛らしいピンクでレースの模様が施されたデザインにこれまた可愛らしいゴシック文字で《 Sugar House オープン前日特別チケット》と書かれていた。
「これってたしか……」
「そう!今度オープンするケーキバイキングのお店!!いち兄が応募して当ててくれたんだ!!」
確かに、名前欄には一期兄さんの現世名である「
「まじか、一期兄さんすげぇ…」
「それでね、当ててくれたいち兄と僕と五虎退で行こうとおもうんだけど、このチケットあと一人連れて行かないと無効になっちゃうんだー」
「そういえば、この日付の日、粟田口で非番なの一期兄さんと乱、五虎退だけだったな」
よくよくチケットに書かれていた日付をみると、この日は運悪く粟田口の大半が遠征やら出陣、内番でせわしなく動く予定の日だということを思い出す。
「それで、若について来てほしいなー……って」
ダメかな…?と上目遣いで首を傾げてくる乱。
くそ、このおねだりはやめなさいっていったのに!!
おいてあったカレンダーを手に取りその日の予定を確認すると運良く部活とも重なってない。予定無しの休日だ。
「いいよ、予定も入ってないし。行くか、ケーキバイキング」
「ほんと?!やったー!!」
若ダイスキー!!とタックル並みの勢いで抱きついてくる乱の頭を撫でてやる。
さてさて、慌ただしくなりそうだ。
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作者名:千夜一夜月 | 作成日時:2017年5月16日 19時