雅な声に誘われて

〜第10歩〜雅の追憶編(4) ページ11

翌日、いつものごとく晴れていたので大木の所へ行った。

すると、昨日出会った男性が先に来ていた。

変化があるとすれば、少ししんどそうなくらいだ。

「…こんにちは。今日もいらしてたんですね。」

「やぁ…清宗くん。俺は毎日ずっとここにいるよ。」

“毎日ずっとここにいるよ”、その言葉が当時引っかかって仕方なかった。

少し考えてしまっていたのだろう。

男性は痺れを切らして語り出した。

「清宗くんは俺の名前を聞かないでくれる。…少しばかり楽させてもらっているよ。」

その時の雅はほとんど思った事を口に出すことはなかった。

『名前は何？』という質問も雅の心の中にしまわれた。

「俺の名前は神様にあげてしまったんだ。そして…俺はその神様の代わりをしているんだよ。」

…神様の代わり。

それは多くの犠牲を伴っていた。

「そ、その神様の名前は？」

その時、初めて思ったままの言葉を口に出した。

素直に男性は答えた。

「俺が代わりをしてるのは“志那都比古神(しなつひこのかみ)”というのが正式な名前の“雅”という神様なんだ。」

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