第四十二話 ページ43
「水島さん!こっちやで!」
『おん。すまんな遅くなった。』
私は体育館に足を踏み入れると、同じチームの女バレの皆さんに率いられて、コートのエンドラインに並ぶ。
「水島さん、ウチらの為にたくさん頑張ってくれてありがとう。」
『え?』
すると突然、隣に立っている九条さんが言った。
あまりに急な言葉に、私はかける言葉を失う。
「さっきな、侑に言われてん。“露草ちゃんの努力と時間を無駄にするようなことすんなよ”って」
『………えぇ』
何言ってんの侑くん。
私の努力と時間なんて、バレー部の人達に比べたら何万分の1なのに、それを無駄にするかもしれないのは私の方なのに。
「侑だけやなくて、治や角名にもガン飛ばされたわ。お前らわかってんのか?みたいな」
『なにしてんねん……』
侑くんだけじゃなかったんかい
なんというか、教え子(?)に過保護すぎなのでは
『……すまんな。なんか、親心が爆発しとるみたいで。』
「えぇよ。言われんでもわかっとったことやし、水島さんが部活の自主練返上してまで頑張ってくれとったこと知っとるし」
バレてた。
それはなんか、すごく恥ずかしい。
私だって、スクールカースト上位の男バレの3人を独占して練習してしまったことはかなり反省している。けれど、それよりも私のド下手くそレシーブとかを見られたのが恥ずい。
「大丈夫や。侑たちが水島さんのトスでスパイク打てたんなら、もう充分。
頑張ろうな!水島さん!」
それでも九条さんは、親指を立ててグッと笑う。
私の下手くそを見た上で、評価してくれて、受け入れてくれた。
………そうか。仲間のためってこういうことか。
『………えぇなぁ』
「……おん?」
『………バレーボールって、えぇなぁ。』
もちろん、バレーに限った話じゃないのはわかってる。
もしかしたら弓道だって、誰かにとっては誰かのためにがんばるスポーツかもしれない。
けれど、この上なく眩しい。
青と黄色のボールを落とさないスポーツの中で繰り広げられる、仲間のためのレベル上げが。
「水島さん………?」
『ううん。なんでもないで。』
そしてホイッスルが鳴った。
さぁ、始めよう。
誰かのためのスポーツを。
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ゆず(プロフ) - 葵坂さん» こちらこそ読み漏れがあったみたいです。この作品好きで読んでいたからこそ気になってしまい勢いあまってコメントしてしまいました。読み続けようか迷っていましたが、作者様のコメント、またこの作品が好きなので読み続けようと思います。応援しています (2023年3月12日 0時) (レス) id: 843a0c5854 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - ゆずさん» 最初に書いてある通りです。おそらく、三十二話の辺りでご不快に思われたことでしょう。大変申し訳ございませんでした。この教訓をこれからも活かして作品を作って参りますが、もしお怒りが鎮まらないようであれば、どうかこんな作者のことなどお捨ておきくださいませ。 (2023年3月12日 0時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
ゐづき(プロフ) - 毎回楽しく読ませてもらってます!愛知の方の方言あまり知らなかったんですが香川県でも同じような使い方されてる方言があってびっくりしました!!更新楽しみに待ってます!お体に気をつけて頑張ってください🙇♀️ (2023年3月12日 0時) (レス) @page41 id: 5e32b68666 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 弓道やっていらっしゃる方ですか? (2023年3月11日 23時) (レス) id: 843a0c5854 (このIDを非表示/違反報告)
ニコニコマーク! - 此れって愛され作品ですか?だとしたら凄い嬉しいです! (2022年9月7日 16時) (レス) @page27 id: 23150a6704 (このIDを非表示/違反報告)
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