【HQ!】バレー部とのエンカウント率が高い系女子の日常【稲荷崎】

第三十七話 ページ38

その後何をしたかでもなく、かなり遅くなってしまったので、今日はお開きになった。


宮家は我が家とは反対方向なので学校で別れたが、角名くんは寮との事で、途中までは一緒に帰ることになった。



『ほんじゃ、また明日。』


「おん。露草さんも気ぃつけてな。」


「オラ角名ァァァ！！露草ちゃんに変なことしたら許さへんからな！？」


「んなことするか」



なんの話しかは知らないが、もう辺りも暗いので静かにして欲しい。


侑くんは、なんか凄くシャイな子だと思っていたけど、やっぱり噂通り、声が大きくて明るい子だった。今までのは一体なんだったんだろう。


そんな二人と別れて、私は角名くんと歩き出す。


手にはさっき治くんが買ってくれたおにぎりと、紙パックのお茶を食べ歩きしている。普段はこんなことしないけど、お腹空いたので許して欲しい。



『………もう食べ終わってしもた』


「凄い食いつきだったもんね。食べるの好きなの？」


『おん。胃袋デカいで。弁当もいつもはおっきめなんやけど、今日は作る気力なくて小さめにしたんや。』


「っ、露草ちゃん料理するの？」


『おん。オカンが朝作ってくれるから、弁当は私作んねん。』



あれ、なんかこの会話どっかでしたような……あ、昼の治くんとか。



「弁当か……俺寮だから２年くらい食べてないや。」


『そうなん？それは可哀想やな。確か地方から来てんねやろ？家が恋しいやろうに、それでモチベーション保って部活やるんはキツいやろ。』


「！」



私がそういうと、角名くんは細い目を大きく見開いて見せた。


その驚きようからすると、今まで誰にも気にされなかったのだろうか。
もしそうなら、私は男バレの人達を軽蔑する。



『もし辛かったら、なんも聞かんからウチ来な。寮でどんなご飯出されとるか知らんけど、普通の家のダイニングで食べるあったかいご飯は、きっと美味しいで。』



らしくないというか、かなり馴れ馴れしいことを言っているのはわかっている。


私なんて全国大会で地方のホテルに一人で泊まる時でさえダメだと言うのに、こんな遠方に長い間一人で厳しい練習に耐えてきたとか、地獄でしかない。



『…………角名くん？』



しかし角名くんは驚いたまま固まってしまい、その場に立ち尽くした。


いつかの侑くんを思い出して、どうしようか悩んだが私はハッと思い出した。



『！アカン！！体育館の鍵かって(・・・)くんの忘れたわ！！』


「えっ」


『すまん角名くん！これどっか適当な場所にほかっといて(・・・・・・)！！』



私は、その場に角名くんを残し、全速力で学校に戻った。

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