第三十三話 ページ34
私の手元にあるのは、青と黄色のボール。
界隈では『ミカサ』と呼ばれるバレーボール。
私がまじまじとそれを見ていると、侑くんが口を開いた。
「目と耳の穴かっぽじってよう見ときや」
『え、あ、はい』
そして侑くんは胡座から勢いよく立ち上がると、ボールを片手に私を指さす。
例えるなら、アイドルのファンサを目の前でやられた心境。
一度だけ、心臓がドクンと大きく鳴ったと思ったら、侑くんはお構い無しに背を向けて、体育館の壁近くに立った。
そして高く高く上げられたサーブトスから、流れるような助走をとると
高く、高く跳んだ。
その高さに呆気に取られているうちに、ボールはものすごい音を鳴らして、相手コートのライン際に放たれた。
無事に着地をし、そして侑くんは私を見た。
そしてとても眩しい笑顔で、こう言った。
「どや！俺、かっこええやろ！！」
思わず頷いた。
その通りだ。凄くかっこいい。
家でちょっとだけ見た、バレーボールの試合動画とは比べ物にならないくらいの迫力。
度肝を抜かれた私に、侑くんはボールを持ってスタスタと近付くと、それを私に投げた。
そこそこ慣れた私はそれを難なくキャッチすると、侑くんは私の手を掴んで勢いよく立たせた。
『うわぁっ？！』
「水島さん！俺にトスあげてや！！」
『えっ』
困惑する私に、侑くんは『さっきのレフトへのオープンでかまへんよ！』とお構い無しに言ってのける。
けれど侑くんは、既に助走距離を確保してしまった
よく分からないけれど、私はボールを高くワンバウンドさせ、そして素早くボール下に体を滑り込ませ、その後の膝の上下運動で、高くトスを上げる。
我ながら良いトスだった。
そして思った。
相手がいないのに『決まる』と思った。
侑くんは大きく振りかぶって高く飛んだ。
そしてボールの最高到達点で、スパイクを決めて見せた。
着地した侑くんは、さっきよりももっといい笑顔で言った。
「どや！セッターって楽しいやろ！！」
その言葉に、私は意志を持って大きく頷いた。
確かに侑くんが決めたスパイク。
だけど『私が決めた』という気も捨てきれない。
スパイクというものには、必ずセッターの手が加わるのだ。
それが、何よりも
『かっこええな！！！』
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ゆず(プロフ) - 葵坂さん» こちらこそ読み漏れがあったみたいです。この作品好きで読んでいたからこそ気になってしまい勢いあまってコメントしてしまいました。読み続けようか迷っていましたが、作者様のコメント、またこの作品が好きなので読み続けようと思います。応援しています (2023年3月12日 0時) (
レス) id: 843a0c5854 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - ゆずさん» 最初に書いてある通りです。おそらく、三十二話の辺りでご不快に思われたことでしょう。大変申し訳ございませんでした。この教訓をこれからも活かして作品を作って参りますが、もしお怒りが鎮まらないようであれば、どうかこんな作者のことなどお捨ておきくださいませ。 (2023年3月12日 0時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
ゐづき(プロフ) - 毎回楽しく読ませてもらってます！愛知の方の方言あまり知らなかったんですが香川県でも同じような使い方されてる方言があってびっくりしました！！更新楽しみに待ってます！お体に気をつけて頑張ってください🙇♀️ (2023年3月12日 0時) (レス) @page41 id: 5e32b68666 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 弓道やっていらっしゃる方ですか？ (2023年3月11日 23時) (レス) id: 843a0c5854 (このIDを非表示/違反報告)
ニコニコマーク！ - 此れって愛され作品ですか？だとしたら凄い嬉しいです！ (2022年9月7日 16時) (レス) @page27 id: 23150a6704 (このIDを非表示/違反報告)
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