【HQ!】バレー部とのエンカウント率が高い系女子の日常【稲荷崎】

第二十一話 ページ22

そして始まった体育


言わずもがな女子と男子は別れて測定を行う


まず女子がハンドボール投げ、男子が50m走を走る


私は後半の３組だし、出席番号も後ろ辺りなので、出番が来るまで大人しく座っていた


その後ろには50m走のトラックがあって、さっきから土煙が凄い。あと三組の男共の雄叫びも凄い。そこが彼らの残念な所だ。ルックス良し運動神経良しなのに、圧倒的体育会系(ガチ勢)である


その声を聞いて、あぁ、男子は3組から測ってるんだな、とふと思うと同時に、肩に手が触れた


ちょっとびっくりして見上げると、その正体はさっきぶりの角名君だった



「水島さん、まだ投げないの？」


『……っ、あ、角名君。そうだよ、私出席番号後ろの方やし』


「そっか。俺達もまだ時間かかりそう。……だからさ、待ってる間、ちょっと隣座ってもいい？」


『おん。ええよ』



随分可愛らしいお願いに内心、ほえーと間抜けな息を含みながら、自分の隣を許す。相変わらず土煙が凄いが、角名君は大丈夫だろうか


しかし案の定被害に合っていた。ゴホゴホと咳き込んでいる。私も目に砂が入りかけた



「ｹﾎｯ､ｺﾞﾎｯ………相変わらず3組は凄いね。さっきから何回も走り直してるから、全く進まなさそう」


『あー……ごめんな。でも彼奴らも馬鹿なだけで阿呆や無いし、多分弁えてると思うから、大目に見たって』


「………水島さんでも馬鹿とか阿呆とか言うんだ」


『言うわ。私も関西人やし。……まぁ、ツッコミとまでは行かんけど』



うちの男共は、もう一度言うがルックス良し運動神経良しなのに超体育会系(ガチ勢)である。言うなれば脳筋である。ルールよりもスポーツマンシップが大切な熱血達である。


ルックス良いのに。ルックス良いのに(大事な事なので2回)


残念な男、とはこいつらのことを言うんだろうな……と、3組女子は皆して哀れんでいる。そして少しだけ、尊敬している。今の世の中、あんなに1つのことに打ち込めて、誰にでも平等に接して、切磋琢磨の精神を保ち続けれる人なんてそうそういない。改めて、スポーツは偉大だと痛感せざるを得ない


そう。彼らはスポーツ馬鹿なだけであって、空気の読めない阿呆とは違う



『………みんな、いい人だよ』


「………そっか」



そんな私の独り言に、角名君は静かに言葉を発する


何やら寂しげな雰囲気を纏った一言に首を傾げるが



「水島さんー！！次やでー！！」


『……あ、はーい。じゃ、行ってくるわ』


「うん。頑張って」



順番が回ってきたハンドボール投げに、その疑問は掻き消された

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