24.頂点への一歩 ページ28
会場をひたすらに湧かせた井闥山高校の3分間の公式練習。
大熱狂が収まらぬままに終わり、相手方の公式練習が始まった。
その間は、俺たちは監督の周りに集まった。
「シアス!!」
「「「シアーース!!」」」
監督やコーチからのお言葉を貰う際は、まず最初に頭を下げるのがジャパニーズスタイルだ。
「では、毎回同じことを言うけれど、今回は1年生2人もいるので念入りに。」
不知火先生は、いつもの穏やかな笑顔で口を開く。
「我々は頂点を目指すもの。今年の夏も優勝候補筆頭の座を賜ったわけですが」
「たまわった?」
「貰ったを超丁寧に言った言葉。」
「へぇ…」
隣の賢章がこっそり教えてくれる。
「たったそれだけです。そのような代名詞を与えられているだけで、我々にはなんの権限もありません。
誰かを『弱い』と定義付ける権限も、勝利が確定されているわけでも、勝たなければならないという義務もない。
まず、それらを君たちは自覚しなければなりません。
一人の人間としてのマナーと、スポーツマンとしてのモラルとフレンドリーシップを大切にしてください。」
隣の賢章が目を輝かせている。
賢章が好きな言葉のオンパレードだ。
そうだ。俺たちは最強に近い場所にいる。
だからといって、他のチームを『弱い』と卑下したり、誰かの技術に口を挟む権利もない。
「頂点を目指すのであれば、常にスポーツマンシップを大切にしなければなりません。君たちは最強の挑戦者であり、過去には王者であったかもしれませんが、だからこそ常に相手を尊重するプレーと行動を心掛けてください。
これから我々は沢山のチームと戦い、そして勝利するでしょう。しかし我々の歩む道は、常に誰かの涙と悔恨の上にできていることを忘れないでください。だからこそ、一切の遠慮も同情も侮蔑も挟んではいけません。それらは、多くの人々を蔑ろにする行為であり、そして我々が積み上げてきた『努力』や『準備』を無駄にします。」
相変わらず、不知火先生の話は俺にとってはよく分からない言葉が多い。
けれど、今は少しはわかる。
「『王者』は決して、何をしていい訳では無い。
『王者』になりたいのならば、それにふさわしいスポーツマンシップを持つこと。つまりはこういうことです。
一織くん、理解はできましたか?」
「っ、はい!」
その瞬間、ホイッスルがなった。
いよいよ、始めの一歩が踏み出されようとしていた。
「さぁ、我々のヴィクトリーロードが始まります。
どんな相手であれ、僕ら全員で相手を倒しに行きましょう。」
「「「はい!!」」」
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ポンコツ(プロフ) - 好きなお話です!これからも更新楽しみにしてます(*ノ´∀`*)ノ (5月26日 13時) (レス) @page43 id: 16f55af0f9 (このIDを非表示/違反報告)
ポスバス(プロフ) - うわ!パスワードかかっていたときから待ってました、、、!!応援してます!!! (2023年4月24日 21時) (レス) id: d26458d622 (このIDを非表示/違反報告)
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