19.背番号4 ページ23
初めての練習から2ヶ月が経った。
変わったことといえば、あれから賢章が心配して2日に1回くらいウチに泊まりに来るようになったこと
日本中を、じめじめとした梅雨が覆い始めたこと
やはり日本語が分からないので、とりあえず漢字検定5級をとってみることにしたこと
そしてあの『角端塾』にユーさんとサクさんとワンさんが加わったこと
最後は____
「一織くん、賢章、今日から君たちは1軍に合流だ。
一織くんは、OP。賢章はWS。バシバシ使っていくから、気をしっかり持つように。」
俺と賢章の合流が告げられた。
ミネや掌も喜んでくれてはいたが、やはり悔しさはあるようで練習後の角端塾では並々ならぬ執念で取り組んでいた。
色々あって目まぐるしい毎日ではあるけれど、着実に俺やみんなもスキルアップしている。
俺も、1軍に選ばれたからにはレギュラーを目指して頑張らなければならない。
そういう意味でも、これからの時間はかなり貴重だ。
早くチームのリズムを掴まなければならない。
さて、話は変わって今日はいよいよ今週から行われる全国高校総体の東京予選に向けて、スターティングメンバーが発表される。
「1番、有馬悠介。」
「はい!!」
「2番、山崎朔良。」
「はいっ」
「な、なんか緊張する……ッ」
「なんでミネが緊張するんだよ。」
「賢章と一織は余裕かよ。まぁ、もう決まってるもんなお前らは。」
「かーーっ!!悔しーー!!次は俺らも頑張ろうなヅナ!!」
「おうよ。」
粛々と告げられていく中、俺たち1年は後ろの方に並んでいるので、比較的穏やかにちょっとした小話もしながらその様子を見守っている。
目の前の2年生や3年生は、殺伐とした雰囲気の中、不知火先生の放つ言葉に意識を研ぎ澄ませていた。
「4番、角端一織。」
「………えっ。」
「一織くん、君が4番だよ。」
4番。
日本という国においては、エースや主砲を背負う番号とも聞く。
そして、経験や年功序列が重視される日本において、入学したての1年生がそれに選ばれるというイレギュラーと、期待と、責任。
それらが伴わない者に、この番号は渡さない。
妥協や消去法で安易に渡していい番号では無いのだと、お母さんが言っていた。
「ポジションはOP。勿論レギュラーだ。君の名を、世に知らしめてきなさい。」
不知火先生の言葉が、いやに心に響く。
「………はい!」
これが、入部から3年間、外されることなくエースであり続けた男の、始まりの伝説だった。
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ポンコツ(プロフ) - 好きなお話です!これからも更新楽しみにしてます(*ノ´∀`*)ノ (5月26日 13時) (レス) @page43 id: 16f55af0f9 (このIDを非表示/違反報告)
ポスバス(プロフ) - うわ!パスワードかかっていたときから待ってました、、、!!応援してます!!! (2023年4月24日 21時) (レス) id: d26458d622 (このIDを非表示/違反報告)
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