36.好きな人 ページ36
そしていよいよ借り物競走が始まった。
幸郎の出番はなんと一巡目。
さっきからすっごい目が合うし、口パクと目線でずっと『動かないでね』しか言って来ない。
「葵ちゃん私を守ってね。」
「無理だよ。昼神には誰にも勝てないって。」
「………じゃあやっぱり校舎裏辺りで引きこもって」
「後で後悔するのはAだよ。」
「うぐあ」
本当はムカついたからバックれてやろうと本気で思ったのだけど、後で報復されるのはAだよと葵ちゃんにマジトーンで言われて妙に刺さってしまった私である。
幸郎の報復だなんて、考えただけで恐ろしい。
「ていうかさ、普通借り物って同じ色の団から貰うでしょ。なんでわざわざ私なの。」
「そりゃあんな事件もあったし、全校中に知らしめたいんでしょ。彼女いるから金輪際関わってくんなって。」
「んな物騒な。」
「………………まぁ、Aは知らないしね。」
「何の話よ。」
「…………………世の中には知らなくていいこともあるんだよ。」
「は?」
幾ら幸郎でもそんなことはしないでしょ。
一応あれでも穏やかで優しい人で通ってるんだから。
だからこそモテるんだけどね。
なんか2組の奴らすっごい変な顔してるし、星海に至っては菩薩顔だし。
なんなの、何があったの2組よ。
『よーい、((パァン!!!』
そんなことを話しているうちに、スタートの合図が鳴った。
『さぁ始まりました男女別借り物競走!!各レーン一斉にスタートし、それぞれ用意されたお題箱の中から借り物のメモを引いています!!』
『おおっと!!各レーン頭を悩ませていますがまっさきに走り出しのは5レーンの1年5組!!これは5組が勝利の切符を掴むか……?!』
嫌な予感というか、噂をすればというか、幸郎はお題を引いて閉じられた紙を開いた後のコンマ数秒も経たずにこっちに向かってきた。
「A!!行くよ!!」
あっという間に2組テントにやってきた幸郎は、最奥にいた私の手をやんわり握って引っ張り出そうとする。
「ちょっと待て!!お題はなんなんだ?!話はそれからだ!!」
これでも一応敵陣営なので、あと顔みたらちょっとさっきのイライラが再発したので、5割くらいの力で抵抗をしてみる。
しかしそんな私の反抗は通じなかったようで、幸郎は嫌な顔ひとつせずに私の身体を強めに引っ張って腕に抱き込んだ。
そして抵抗の声をあげる前に、私の膝裏に手を差し入れて、あの姫抱きをやってみせた。
「『好きな人』」
「……は?」
それだけ言うと、幸郎は私を抱えたまま全速力でゴールに向かった。
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葵坂(プロフ) - みるくてぃーさん» もうねー!!私が書くと本来かっこいいキャラが女々しくなるんですよね!それが私の性癖なので!!劇場版はなんか伸びちゃいましたよね!!ちくしょう!!!!!!気長に私の小説でも読んで昼活してください! (6月28日 10時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
みるくてぃー - 初コメ失礼します。え、昼神君可愛っ!!!劇場版めためた楽しみなんだが。更新応援してます!(?) (6月1日 16時) (レス) @page44 id: 461adb2062 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - FLOWERさん» これはこれはこちらでもありがとうございます!こんな駄作で良ければいつでもご覧くださいませ!なんですかねぇ、作者芽生男書くとなんかたまに女々しくなっちゃうんですよね笑キャラ崩壊しない程度にもちろん作者の解釈の中で、これからも最新して参ります! (5月4日 20時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
FLOWER(プロフ) - 前作から応援しております、FLOWERです。最近勉強などで忙しい中これを読ませていただいてます。話は変わりますが、昼活のセンス良すぎませんか?昼神も可愛くて、甘酸っぺえさが増しましたね…これからも更新応援してます!互いに昼活しましょう笑笑 (5月4日 19時) (レス) @page38 id: 87ff2022c1 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - 眠いちゃんさん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!どぞどぞ!いくらでも話して行ってくださいねー! (2023年4月30日 10時) (レス) @page31 id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
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