ココアより甘い【昼神幸郎】

２５．涙 ページ25

あ、５限のチャイム鳴った。




閉じ込められて多分１０分は経ったと思う。


やはり真夏日の蒸し風呂は少ない時間でもごっそり水分を持ってかれるので、もう私は瀕死状態。



メンタルは強い方なので、問題なのはやはり身体の方だ。


果たして、助けが来るまで持ち堪えられるのか。





と思っていたけれど。





(………………このまま助けが来なかったら？)





そんなわけないのに、ふと頭をよぎる。



今頃私の姿がなくて星海辺りがおかしく思ってくれているはず。


私のマブダチはちゃんと見つけてくれるし、手伝いしてた葵ちゃんも見つけてくれると信じてる。




でもそれはいつになるんだろう。



汗は流しすぎてもう出ないし、喉乾いたし、頭痛くなってきたし、呼吸も荒くなってきている気がする。






辛い。





そう思うとメンタルなんて飛んでいくもので、私の目尻には涙の膜が張り始めた。



なんだよ、涙出るくらいなら汗かこうぜ。



なんて思うのも一瞬で、すぐにのしかかってくる「早く助けて」と懇願する感情。




無理、キツい、助けて





涙の膜は量を増して目尻から下に流れていく。



もし見つかった時に泣いていたりなんかしたら、私をここに閉じ込めた人からしてみれば作戦大成功な訳で、絶対に泣き顔なんか見せるものかと決めていたけれど






やばい。メンタルやられて泣く。



悲しいとか、怖いとか、悔しいとか、許せないとか、そんなものじゃない。



虚無感と絶望。


不調と孤独。



本来同時に起こってはならない感情が同時に起こっている。




……誰でもいいから来て欲しい。




星海


葵ちゃん


茜くん



この際２ｍさんでもいい






「ぅ…………ぁ"っ……ぐぁ………ん"…………っ」





あぁ、声を上げて泣きたくなるのなんて何年ぶりだろう。



声を堪える為に奥歯を噛み締めるのだけど、やりすぎて痛い。



呼吸が正常にならないから、どんどん荒いを通り越して過呼吸気味にもなってくる。





落ち着け、落ち着けと思うけれど、一向に落ち着かない。




酸素が体に入ってこない。



遠くなる意識、苦しい呼吸、暗くなる視界





あぁ、もうダメだ。






「さ…………ち、ろ………っ」






そう感じたその時






目の前が途端に明るくなった

２６．過呼吸→←２４．絶体絶命

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す