ココアより甘い【昼神幸郎】

１６．苗字 ページ16

「A…じゃなかった、昼神！さっき先生探してたぞ〜」


「Aちゃ…じゃないや、昼神ちゃん！宿題見せてくれない？」


「おーい昼神！そこの筆箱取ってくんね〜？」


「いい加減にしろよお前ら」





現在三限と四限の間の休み時間。


今日は幸郎のＴシャツと短パンを着て過ごしている私だが、Ｔシャツの背中に幸郎の苗字が書かれているので、クラスのみんながそっちの方で呼んでくる。



いや、よくあるよ？

体操服とか借りて、いつもと違う苗字だからその名前でからかって呼ぶのは。


だけど





「昼神(嫁)〜」


「ふざけんな」


「わ〜怒った〜」





昼神(嫁)ってなんだ。





「お前らついにくっついたんだってな……おめでとう( •̀ω•́ )✧」


「おめでとう( •̀ω•́ )✧。じゃないんだよ。既にくっついてるっての」


「はっ！！まさか既に入籍したと……？！」


「そろそろ怒るよ？」





こういう時だけクラス一丸になるのなんなんだろう。


入籍もしてないし改名もしてないからガチでやめて欲しい。





「ノンノン！みんなそんな風に苗字だけで呼ぶからダメなんだよ。」





するとそこにトイレ帰りの葵ちゃんが来た。


嫌な予感しかしない。





「ちょっと葵ちゃん黙ってて」


「Aを照れさせたいならフルネームで呼ばないとね！」


「聞けよ」





相変わらず人の話を聞かない。


というか、フルネームはもっとやめて欲しい。






「昼神さ〜ん。昼神Aさ〜ん。第２診察室にお越しくださ〜い」


「何故に病院の呼び出し風」


「フルネームで呼ばれる時って大抵こうでしょ」


「ほんとやめて」


「うっわwwA、じゃないや。昼神めっちゃ顔赤い！！」


「Aであってるっての！！！」





苗字だけならなんとかなってたのに、名前まで組み込まれるともうダメだ。頭が浮かれる。


昼神A


昼神A………すっごく照れくさい



これじゃ、ほんとに結婚したみたいじゃん





「いや、ちょっと待て。将来的にはA幸郎も有りうるやも………」


「いやいや！！女の子の夢は旦那の苗字でしょ！！」


「俺は嫁さんの苗字でも大歓迎だけど？」


「人それぞれでしょ。でもAは旦那さんの苗字派だもんね？」


「……まぁ、そうだね」





いつの間にやら結婚する時の苗字の話になっている


でも、私だって考えないわけじゃない




けれどそれを本格的に考える時まで、幸郎と続いているのかは分からない


だからほんのちょっとだけ、現実味がわかなかった

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