ココアより甘い【昼神幸郎】

１５．ただのセコム２ ページ15

Aが保健室に向かった直後のこと。



落ちてきた水が放たれたと思われる場所に、園芸部はいた。



そこは、校舎の５階にある空き教室のベランダ。


そこには大きな桶が放置されていた。


鍵はいつも開いており、なんなら滅多に人通りが無いフロアである。


ここに来る途中に聞き込みもしたが、それらしい人物は目撃されていないとのこと。





「でも、アンタ達が見た限りでは、女子生徒っぽいんだよね？」


「おう」




部長今泉の問いに、同じ３年生の男子園芸部員が頷く。





「こんな大きな桶、何処で手に入れたんだか……」


「空き教室にあったっぽいな。ここほぼ物置部屋だし」


「なんならベランダに水道もあるから、女一人でも犯行可能って訳だな」





見事な証拠隠滅である。





「先生に言うか？」


「それも手かもね。大々的に犯人探しが始まったら大人しくなるだろうし」


「大人しく？前にも似たようなことあったんですか？」


「そう、だね。………Aちゃん、前にも嫌がらせされたんだって。本人には気付かれてないけど」


「嫌がらせ？」


「同じクラスの女の子が教えてくれたんだけど、前の金曜日に画鋲踏んじゃったんだって。本人と彼氏はすぐ保健室行ったから気付いてないけど、その画鋲ってのが、Aちゃんのスリッパに敷き詰められたうちの一つが溢れてたやつだったらしい」


「は？！スリッパに画鋲？！時代遅れすぎね？？」


「馬鹿そこじゃないでしょ。誰かがAちゃんを攻撃してるってこと！！」


「でもあんな良い子が誰かの恨み買うとかあるのかよ。それもこんな大々的な嫌がらせなんかして」





うーん、と部員たちは頭を悩ませる。


そして導き出された答えは。





「………彼氏くんだな」


「明らかにモテそうだし」


「でも充分お似合いだろ。あれ以上ベストな組み合わせなくね？」


「そうですよ。嫉妬なんてお門違いです」


「でもそんなの、嫉妬してる本人には分からないものよ」


「彼氏くんは知ってるんでしょうか」


「言った方が良くね？」


「……でも彼。Aちゃんが嫌がらせされてるって聞いたら、なんかすごいことしないかしら」


「す、すごいことってなんだよ」


「すごいことはすごいことよ」


「完全なる私たち(と作者)の偏見ですけどね」


「………とりあえず、今回のことはここの水道が壊れてたってことにしておいて、彼氏くんやAちゃんには黙っておこう」


「そして私たちは密かに犯人をつきとめて、Aちゃんを守って、そして秘密も守る」


「よし。そうしよう」





彼らは園芸部


ただのAセコムである

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