12.温かい手 ページ12
「A!!!」
その声は、下を向いていた私の頭を一瞬で上げさせるくらいには待ち望んでいたもの。
心細くなった私の心が、無意識に求めていた温もり。
「さち、ろう」
そこには、まだ練習着のままで息を切らしている幸郎がいた。
安心して私の頬も緩み、口からも勝手に彼の名前が零れる。
幸郎はすぐに駆け寄ってきてくれて、蹲る私に目線を合わせるように膝をつくと、頬に両手を添えて顔を覗き込んだ。
幸郎の温かい手に、私の中の悲しみや恐怖がだんだん溶けていくのがわかる。
「大丈夫?さっき悲鳴が聞こえたけど……水かけられたの?」
「かけられたって言うか、落ちてきたと言うか……」
「落ちてきた?!」
悲鳴ということは、私の叫び声を聞いて来てくれたのだろうか。
よく見たら靴もバレーのシューズだし、確かにここから体育館近いし。でも流石に耳が良すぎると思う。そう考えたら、尚更気分は落ち着いてくるし、なんならちょっと余裕も出てきた。
「………顔色は、そこまで悪くは無いね。寒くない?」
「寒いし気持ち悪いし最悪の気分だったけど、幸郎の声聞けて、顔見れて心配してもらえて、ちょっと元気出た。」
「………それは良かった。」
幸郎の心配そうな顔も、ふっと柔らかくなった気がする。
彼は頬に添えていた手を頭に乗せて、優しく撫でてくれた。
幸郎の大きく優しい手に、私の顔はもうゆるゆるになってしまう。
「うおっほぉん!!」
しかし、そんな空気に浸っているのも束の間、私を囲んで守ってくれていた先輩方が微妙な目線を送っていたのに気付く。
私は一瞬で羞恥が上ってしまって、顔に熱が集まる。
幸郎は苦笑いを浮かべ、私から手を離す。
「えっと……Aちゃんの彼氏?」
「あ、はい。見ての通りバレー部で、」
「昼神幸郎です。それで、なんでAがこんなことになってるんでしょう。」
幸郎が、苦笑から圧のある笑顔に切り替わる。
ちょ、相手先輩だぞ………?!
それほど私を大切に思ってくれてる証なんだろうけれど、私はハラハラが止まらなかった。
「幸郎、先輩達は関係ないよ。寧ろ心配してくれたの。」
「知ってるよそれは。俺は詳細が聞きたいの。」
「おぉう……」
とりあえず、先輩方に怒っている訳では無いとわかったので安心した。
なんだそういうことか、と納得した先輩方は幸郎に色々話してくれた。
あとで謝っておこう。
ーー
【YKZ】
2.好きな食べ物は?
「前まではチーズケーキ。今ではカフェオレ。」
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葵坂(プロフ) - みるくてぃーさん» もうねー!!私が書くと本来かっこいいキャラが女々しくなるんですよね!それが私の性癖なので!!劇場版はなんか伸びちゃいましたよね!!ちくしょう!!!!!!気長に私の小説でも読んで昼活してください! (6月28日 10時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
みるくてぃー - 初コメ失礼します。え、昼神君可愛っ!!!劇場版めためた楽しみなんだが。更新応援してます!(?) (6月1日 16時) (レス) @page44 id: 461adb2062 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - FLOWERさん» これはこれはこちらでもありがとうございます!こんな駄作で良ければいつでもご覧くださいませ!なんですかねぇ、作者芽生男書くとなんかたまに女々しくなっちゃうんですよね笑キャラ崩壊しない程度にもちろん作者の解釈の中で、これからも最新して参ります! (5月4日 20時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
FLOWER(プロフ) - 前作から応援しております、FLOWERです。最近勉強などで忙しい中これを読ませていただいてます。話は変わりますが、昼活のセンス良すぎませんか?昼神も可愛くて、甘酸っぺえさが増しましたね…これからも更新応援してます!互いに昼活しましょう笑笑 (5月4日 19時) (レス) @page38 id: 87ff2022c1 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - 眠いちゃんさん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!どぞどぞ!いくらでも話して行ってくださいねー! (2023年4月30日 10時) (レス) @page31 id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
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