カフェオレ男子【昼神幸郎】

２８．インターハイ１日目 ページ28

まぁ控えるもなにも、私今東京の同じ場所にいるんだけどね。



８月上旬。夏の高校総体、通称インターハイが開幕した。




鴎台は第八試合。かなり遅くなると思われたので、私は当日に余裕で新幹線で東京に向かった。





……………ことも無く、かなり急いてしまって、着いたのは昼前だった。



楽しみだったとか、行きたいところがあったとか、そういうのでは無い。



＿＿＿ただわかるのは、家を出てからここに来るまで、昼神のことしか考えていなかった。




夏休みが始まってもうすぐ２週間。


あれから１回も会ってない。



毎日毎日口説かれているので、いざ顔を合わすとなると気まずい気もするけれど、それを上回るほどの“会いたい”という感情。



………思い込みが激しい自分の性格にしては、大分解されたな。



こんなの、来る１ヶ月後の最終日にどうなってるのかなんて、容易く想像がつく。



私は昼神のことについては、とことん自惚れて、自意識過剰になると決めたのだ。



ならば私の気持ちも、自然に昼神に引っ張られる。



私に出来ることは、移り気になりつつある自分の気持ちを、この１ヵ月で如何に固くするか。




昼神だけに頑張らせる訳にはいかないから。





「…………だからと言って早く来すぎたことが解決する訳じゃないけどね……」





何の話で盛り上がってんのか知らないけれど、第八試合まで何すればいいんだって話だ。


所詮はバレー初心者。解説が無くては楽しめないし、ただただ圧倒されるだけ。


どのコートでどこの高校が試合やってるかなんて全く分からないから、鴎台がやる時も迷いそうで怖い。


それに会場も、色んな学校の応援団とか来てて音大きくて目眩がしそう。


趣味の関係で大きな音は慣れてるけど、こんな雑多な感じじゃないし、なんかあの学校の応援すっごいブーイングしてるし、なんかちょっと怖い。



そしてインターハイ予選の１日目より高い巨人の密林が茂っている。


熱気も凄いし、目の前は巨人ばっかだし、あれ、今日が私の命日………？




視覚情報も整理できず、熱気でフラフラしてしまう。



まずい、まだ昼神にも会えてないのに。



とりあえず、どこか座れる場所………




そう思ってフラフラしていると、急に肩を強く掴まれた。






「Aちゃん、無事？！大丈夫？！」





聞き慣れたと言うか、待ち望んでいたというか、兎に角張り詰めていた気持ちを解いてくれる、あの声。


私はほっと胸を撫で下ろし、振り向いて顔を見た。





「久しぶり、昼神。」

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