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《あの北米の成金の事が気になっているようだが、君が注視すべきは今そこでは無いことをわかっているかな?》
「!」
《そうとも。君はいつも通り、組織とヨコハマの事だけ考えればいい。…………そうすれば、君がすべき事はしっかり見えてくる筈だ》
再び思考が戻される。
森鴎外は、ポートマフィアは、ヨコハマは、選ばなくてはならない。
【組合】か【宰相】かを
《金の問題ならば、私が懸賞金の倍額を払おう。少しおまけで150億程でどうかな?》
「………伯爵、そういう問題では」
《わかっている。これは当てつけだ。
……よくも我が愛し子を70億なんて端金で手に入れようとしてくれたものだ。》
そう、金の問題では無いのだ。それは伯爵もわかっている。
虎探しを断ったとしても、引き受けてポートマフィアが伯爵に潰されても、組合には何も痛手にはならない。
問題なのは、虎探しが長引くことによって「組合」自らがヨコハマに干渉する可能性があること。
人虎に70億の価値があるかどうかは分からないが、ソレがヨコハマにいる度に「組合」はヨコハマに触手を伸ばし続ける。
70億という破格の値段から本気度が伺えるように、例えヨコハマを焼き野原にしようとも、彼らは絶対に人虎を諦めない。
故に、ヨコハマを愛する森鴎外と、彼が率いるポートマフィアは、その「害悪」を消し去らなければならない。
例え懸賞金が無くとも、ポートマフィアは動いただろう。
「組合」は、欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れるのだから
《何を迷っているんだい?
真に敵に回すべきでない人間を、君はよくわかっているだろうに》
伯爵の声が、再び森の鼓膜を凍らせんとする冷気を放った。
そうだ、森鴎外は知っている。
世界の均衡を。世界が今ここにある意味を。
世界が生かされている意味を。
「人を救う人間になりたい」とマフィアを飛び出した太宰治でさえ、彼女の前では従順な番犬に過ぎない
そしてかの伯爵の右腕には、あの「王」が常に控えている
何を血迷って《執事》と名乗っているのかは不明だが、今彼女を敵に回したが最後、異能は太宰によって瞬く間に意味を無くし、武器は全て右腕によって無効化され、それでもなお生き残った強者でさえ、彼女の前では《無》となるのだ。
森鴎外は、世界でただ4人しか居ない、彼女の異能と《執事》の正体を知る貴重な存在である
それは、彼が懸命な判断をする為の、必要な情報であるからだ
即ち【何を血迷っても決してゲーテを敵に回そうと考えないようにする為】である
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苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (7月5日 17時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
きさらぎ(プロフ) - 更新嬉しいです!これからも頑張ってください! (2023年2月25日 22時) (レス) @page19 id: 3316933a16 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (2023年1月16日 7時) (レス) @page18 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
瀬羅 - あのー、すみません。乱歩さんの『機嫌』が「期限」になってるな〜と思って報告しました。はい。 (2023年1月2日 8時) (レス) @page17 id: 3328415a9f (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - でんでんでんさん» ありがとうございます!夢主はイケメンを目指して書いてます!これからもよろしくお願いします! (2022年12月2日 8時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
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