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《ごきげんよう、ポートマフィアの首領殿。私の声を忘れた訳はあるまい?》



ポートマフィア本部、首領の部屋にて、懐かしい番号から己の携帯にかかってきた一本の電話。
気まぐれに出てみたが最後、己の耳に響いたのは、鼓膜を凍らせんとする程の、冷たく涼やかな声音
懐かしい、なんて思う余裕すらない。電子機器の向こうから、己を殺さんとする絶対零度の殺気。



______【宰相】

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ


かつて、己がポートマフィア先代首領を殺した後、後見人として立った、森鴎外の協力者であり恩人の一人である。



「…………えぇ、お久しぶりです。我らが麗しき伯爵閣下。
太宰くんの携帯番号のような気がするのですが伯爵、貴女は今もしや」
《そうとも。私は今ヨコハマにいる。そして、君も知る我が兄の元で探偵社員として働いていてね…………私の愛おしい小虎が世話になったようで、この度連絡を取らせて貰ったというわけだよ》



ヨコハマにいる。
探偵社員。
愛おしい小虎。


彼女の言わんとしていることが、森には理解できた。
件の人虎は、今は武装探偵社で匿われていると聞く。そして、伯爵が探偵社員として居るあの場において、彼処は言うまでもなく、彼女が寵を置く場所。手を出そうものなら、彼女の怒りに触れるは当然。



《とある情報屋も手にかけたそうだが、それらは君達の依頼人に頼まれた仕事であることは知っているとも。ヨコハマを愛する君が率いる集団が、その肝たる情報屋を理由もなく手にかけたりはしない。

私は知っているよ、森くん。君達は汚れ役を引き受けているだけだと言うことを。現に、君たちは何も知らなかったのだからね。私がこの街にいることも、小虎を寵愛していることも_____君たちが殺した情報屋が、私の寵を受けるべき臣下であったことも》
『っ?!』



森は、目を見張った。
彼女が囲おうとしていた情報屋を殺してしまったことにではなく、彼女に関する情報を、当の本人がヨコハマに居ながら、何一つとしてポートマフィアが掴んでいなかったことに、ただ驚きを隠せなかった。
裏社会を牛耳るポートマフィアの何たる無様か。
そして何より信じられないのは、そのポートマフィアに件の情報屋を殺し、虎騒ぎがあった倉庫前に遺体を遺棄することを命じた「組合」である。
…………彼らは、遠い北米にいながら、ポートマフィアですら掴めなかった伯爵の全てを握っていた。

かの『執事』による情報統制を掻い潜って、伯爵の居場所を突き止めていたことが、何よりも信じられない事実であった

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苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (7月5日 17時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
きさらぎ(プロフ) - 更新嬉しいです!これからも頑張ってください! (2023年2月25日 22時) (レス) @page19 id: 3316933a16 (このIDを非表示/違反報告)
- とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (2023年1月16日 7時) (レス) @page18 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
瀬羅 - あのー、すみません。乱歩さんの『機嫌』が「期限」になってるな〜と思って報告しました。はい。 (2023年1月2日 8時) (レス) @page17 id: 3328415a9f (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - でんでんでんさん» ありがとうございます!夢主はイケメンを目指して書いてます!これからもよろしくお願いします! (2022年12月2日 8時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葵坂 | 作者ホームページ:ないっす  
作成日時:2022年11月17日 7時

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