五条への連絡 ページ44
⭐︎
意識の無い蘭ちゃんを抱えて向かった大きな部屋の一室に、私は彼女を下ろした。
うぅ……と小さく呻く蘭ちゃんの顔色は悪い。
私はそれに眉を下げ、少し思案する。蘭ちゃんの性格上、トラウマにはならないと思うが……これで体調を崩したりでもすればやり切れない。
少々手間は掛かるのだが、呪具の一つである記憶を弄る装置を使うべきかもしれない。
高専には呪霊に巻き込まれた一般人が何事もなく日常へ戻れるように、その恐ろしい記憶だけを消す装置がある。
そして、その装置の素晴らしいところはデメリットがない所だ。呪力はそこそこ食うものの、取り除かれた記憶の穴に別の出来事を埋め込み綺麗に穴を消し去ってくれる。
……しかし、それは人気のないところで呪霊に襲われたりしたとき──”本人だけがその事実を知っている”といった場合にしか通用しない。
何故かと言うならば、その別の記憶を差し込まれた人物と周りの人間の記憶に齟齬が生じるからだ。
例えば人物Aが事前に「肝試しに行く」などと周囲の人間に報告していたりし、その後呪霊に襲われ心理的なトラウマを負ったとして。
それからの生活のために記憶を消して当たり障りのない……例えばスーパーに行って買い物をしたという思い出を埋め込んだとする。
するとAが周りに行った内容と矛盾するのだ。
勿論周囲はそれを疑問に思うだろう。忘れてたや何やで誤魔化せるならまだいいが、最悪Aが嘘つきだと誹られたり記憶障害の可能性などで病院に連れて行かれる可能性もある。
つまり、この道具は複数人に対しては使用できない。
「……まぁ、数週間は様子見して、最悪ダメそうなら使う方向で考えよう」
私は顔見知りの女の子が苦しんでいるのを放っておくほど薄情な人間じゃない。
まぁ使うにしても色々と考えなきゃいけないけどね。
……で。話は変わるが。
「……やっぱり使うしかないのかなー」
私は先程から頭の片隅に浮かんでいた考えに、思い切り眉を顰めながらそう呟く。呪物は回収しなければならないが、この場では“一般”であり不法侵入者である私がそう易々と出来るわけもない。
つまり、すっっっっごく屈辱ではあるのだが……使うべきはやはり──
私はスマホの電源を入れ、『クソ目隠し』と書かれた欄に触れた。
プルルルル、と鳴り始めたスマホに嫌々ながら耳をつける。
そして。
「──五条。御三家の力、使って良い?」
『えっ突然ウケる。良いよ』
即答であった。
⭐︎
3481人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リュウイ - 続編も見ました!!面白かったです!また続き待ってます! (2月8日 15時) (レス) @page50 id: 2148135a94 (このIDを非表示/違反報告)
みるく - (Rin)さん» ありがとうございます!いつも見ていると言ってくださり嬉しいです☺️これからもよろしくお願いします! (1月5日 23時) (レス) id: df78d63940 (このIDを非表示/違反報告)
(Rin)(プロフ) - いつも見てます!応援してます!! (1月5日 22時) (レス) id: a9de1c3c9c (このIDを非表示/違反報告)
みるく - ゆゆさん» 本当にありがとうございます〜〜〜!!😭まだ分かっていなかったので嬉しいです!これからもどうぞ読んでくださいね🙇 (12月24日 9時) (レス) id: df78d63940 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです!! 続編の行き方なんですがまだ分からなければなのですがお話を追加の所が50話になると自動で続編へ移行に変わりますよ!続編でも頑張ってくださいね! (12月23日 18時) (レス) @page49 id: 2307c0fefd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みずき | 作成日時:2022年5月22日 17時