【オリジナル企画小説】継承者Ｒ弐 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:8,108 hit

第七十六話『隼』破沼真賀流side ページ26

最悪のタイミングで見つかった。俺はそう思い、とっさに岩の影に隠れたが…よく考えれば逆に出にくい状況を作ってしまったと後悔した。

どうやって逃げ出すかを考えていると、天野永久と一緒にいた2人のうち一人がこちらに向かってきた。

そのまま岩の影を覗き込もうとした瞬間に俺はコートのぽけっとに腕を突っ込み、鞘から短刀を抜いてそいつの眉間ぎりぎりにピッタリとくっつけた。多分防衛本能が作動したのだろう。

「動いたら…死ぬぞ？」

とりあえずそう脅してみる。

このまま帰ってくれれば一番いいのだが、なんとそいつは短刀を素手でつまんでこちらに返してきたのだ。

「私は天月千尋夜って云うんだ。あんた、名はなんて云うんだい？」

唐突にそう聞かれ、思わず固まってしまった。
しばらくしてその言葉の意味を脳が理解すると同時に俺の緊張は一気にほぐれた。

「な…なははは…なははは！アンタみてぇに面白い人は初めて見たなぁ！自己紹介が遅れた、俺は破沼真賀流。隼の英雄王だ。」

英雄王と聞いたとたん、天月千尋夜が驚いた表情をしていた。まあそうだろう。こんな夜にチームリーダーである英雄王が一人でほっつき歩いているなんて想像できないだろうし。

とりあえず、天月千尋夜が下に降りていったためついていくことにした。

しかし次の瞬間、頭上を何かが通過していき、砂埃が舞い上がった。

そして俺の目にはどこかで見たことがある巨大な鎌と巨体が映った。

「お前は…俺が息の根止めたはず…」

そこには昼間体を真っ二つに切り裂いたはずのカマキリが立っていた。

引きちぎった羽と鎌と目は再生し、頭から入った亀裂は綺麗にかさぶたとなっていた。

そして何より、鎌の大きさと数が増えている。

大きさは倍くらい、数は2本から6本にまで増えている。

「…死ぬ寸前に自らの体を進化させて生き残ったのか…？」

そうとしか考えられなかった。

「おい真賀流…こいつは？」

天野永久が驚いた表情で聞いてきた。

「俺が地獄に送ったはずの巨大堕落者。因みに俺は今日4回目だ…」

「そんなにいるのか…こんなでかいのが？」

するとカマキリが大きく口を開いた。そして…

「まぁぁぁぁ！ま…ま、ま、まががががが。がる。るるるるる！」

言葉を発したのだった。

「…やれやれ。知能も発達して俺の名前も覚えられるようになったか？…悪いけど天野永久。少してつだってくんねぇか？」

言い終わる前にカマキリは動き出した。