【オリジナル企画小説】継承者Ｒ弐

第七十四話『鯱』天野永久side ページ24

四つに切り裂かれた堕落者の破片は、トマトを床に打ち付けたような音をたてて落ちた。

能力と属性は上手く組み合わせることで、始めて本当の力を発揮することができる。

ノアから継いだ能力である『目で見たものを別の場所に移動させる能力』。

これにはまだ応用のしようがある。使いようによっては切り札になるかもしれない。

気づけば、那楠も千尋夜も見事に堕落者を打ち伏せていた。それこそ、後に敵とするのがもったいないほどに。

那楠は前の経験が生きているのだろう。傷のひとつも負っているようには見えなかった。

千尋夜はいつのまにか鎖鎌を持っていて、その刃の部分からは血が滴り落ちていた。

自分の戦いに夢中になっていたので、どういう過程を通って今に至るのかは分からないが、いつか敵として目の前にたたれる可能性もあるからにはこれから観察を怠ってはいけないと思った。

今のままでは能力も分からず殺されるかもしれない。不安が頭の中をよぎった。

負けてはいけない。と、とっさに二人を睨み付けたそのとき。千尋夜の目がどこかをとらえていた。

とっさにその方向に目をやると、

そこには、人がいた。それも、見たことがあるやつだった。

「破沼真賀流⋅⋅⋅⋅⋅⋅?」

彼はこちらの視線に気がつくと、場が悪そうな顔をして岩かげに隠れた。

第七十五話『鯱』天月千尋夜side→←第七十三話『隼』奥津城棗side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す