【オリジナル企画小説】継承者Ｒ弐 (ページ12)

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第六十二話『蜉蝣』水瀬裕貴side ページ12

武器の捜索を始めてから数分、闇空は窓の外へと飛び出した。

「おい、マジかよ…」

ぽつりと呟いたその一言は誰の耳に届く事もなく消えていった。

下を除けば、黒い獣の様なものと対峙する闇空が見える。
早く加勢しなければ、と焦る水瀬は小さく蹲る休來を見つけた。

近づき、声をかければ彼女は立ち上がった。
どうやら気持ちが決まったらしい。

そんな事よりも自分、何も決めてないのは自分ではないか。

何が何かしら力がある、だ。
俺にはあるのか、俺には…！

ぐらりと世界が揺れるような眩暈を感じ、よろけた水瀬は窓に手をついた。

そして、次の瞬間。

その窓は吹っ飛んだ。
まるで何か大きな力に引かれるように。

自分がやったのか、信じられず隣の窓にも力を込めて触れてみる。

けれども、窓に異変はない。

次に、引っ張られろ、吹っ飛べと念じながら窓に置いた手に力をいれる。

するとどうだろうか。
其処にあった窓硝子は遠く向こうへ飛んでいった。

「…何だこれ」

此れだけじゃ大それた戦力にならない事は考えずとも察する。
困り果てた彼は、白衣のポケットに手を突っ込んだ。

そのポケットに入っているコツンと手にあたった硬く冷たい感触に覚えがあった。

パチンコ玉。

そう言えば入れっぱなしだった、とその玉を一つ手に取り、先程と同じ様に念じながら床に向かって弾いた。

弾かれた其れは、引っ張られるようにして床にめり込んだ。

感嘆と興奮に息を呑む。

此れならいける。

自分のネームプレートが掛かった部屋を探せば、大量に出てくる鉄の玉と一丁のリボルバー式のピースメーカー。
刃渡りの短いナイフなんかも出てきた。

まったくもって気味が悪い。
まるでこうしろと言わんばかりに出てくるのだから。

拳銃の扱いは慣れていないが、外国で触った事もあり、初めてという訳でもない水瀬は銃弾の数が十分な事を確認する。

この銃の弱点はやはり、自動拳銃と比べた時の遅さだろう。

だが、それでも構わない。

其れらを全て持った水瀬は、自分で飛ばした窓から外に飛び出した。