【オリジナル企画小説】継承者Ｒ (ページ8)

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第八話ページ8

とあるマンションの郵便受けの前にいた男、水瀬の手には、差出人不明の真っ黒な封筒が握られていた。

「最強の、英雄……？」

最強の英雄？なんとも馬鹿げた話だ、と彼はその封筒を屑籠へと捨てようとしたものの、依然として其れが屑籠に入る事は無かった。
理由は不明。
何故だか、捨てられない。
まるで、本能が其れを拒むかの様に。

明くる日、彼はその手紙にかいてある通りの時刻に地図に記された場所へと辿り着いた。
そして、其処で唖然と宝石造りの建造物を見上げていた。
開いた口が塞がらない、目を疑るような光景とはまさにこの事か、などと彼は思考を巡らせる。

周りには彼と似たような、いや同じ封筒を持った人が何人も唖然と其れを見ていた。
その中の、写真を撮ろうとした者は、端末の充電が切れている事に気がついた。
勿論、彼も例外ではない。
彼の手にある端末は画面を真っ黒にして間抜け面をした彼の顔を写していた。
乱雑にそれをポケットに突っ込んで、彼は不思議な建造物の中へと足を踏み入れた。

水瀬が先陣を切り、建物の先へと足を動かしていた人々は、水瀬が足を止めた事により次々に止まっていく。その中にはぶつかって仕舞う人もいると、当然考えられる話だが、彼はそんな事御構い無しだ。
目の前にある扉に興味を示し、其れを押す。
だがしかし、そう簡単に物事が運ぶ訳でもなく、其の扉は開かなかった。
少々、癪に障ったのだろう。彼は近くにある他の扉を乱暴に押した。
「おお」
するとその扉はいとも容易く、否、水瀬にしか開けられないかの様に開いた。そして、閉じた。
あまりにも一瞬で自然に閉じた扉にまたもや唖然とさせられる。
ぽかんと、間抜けな顔をした後に彼は部屋の天上から床までゆっくりと視線をずらした。
天井や壁には奇妙な柄が描かれていた。じぃっと天井を眺めていると、柄の中にとある文字が読めた。
「アいザック…ニゅー、とん？」
無意識のままその言葉を口にすれば、目が眩むようなまばゆい光が目をさし、水瀬は視界を奪われた。