第四十一話『隼』奥津城棗side ページ41
『吉田寅次郎です。後世では松陰の方が著名なのでしょうか。隣の彼は僕の塾の門下生で、山田市之…失敬、山田顕義君です。』
『山田顕義です。…戊辰戦争の討伐軍の指揮や近代日本の法典整備などを務めました』
あまりにも現実離れしたこの世界に先程の出来事、頭が付いてきていない。
多分電車の中に置いて来てしまった。
松陰先生は、教科書で見ていた絵とは全然違った。
山田さんは…写真通りだった。
『この世界で必要となる、”力”を君に授けます。僕達の力を上手く扱えるかどうかは君次第です。』
す、と差し出された華奢な白い手。
意味が分からず困惑した。
取り敢えず握手のつもりで手に触れた瞬間、カッと身体が熱くなる。
それを確認して満足気に頷くと、松陰先生は溶けるように消えてしまった。
隣が消えるのを見届けた目の前の男性、顕義さんが松陰先生同様に手を差し出した。
少しごつごつしていて、何処か懐かしい手。
顔こそ無表情だったが、目に何か強い意志が秘められている。
恐る恐る自分の手を重ねると、また血が騒ぐような感覚に襲われ、ついには二人とも消えてしまった。
自分以外誰も居なくなった寂しい空間に、
ふとドアが現れた。
第一ステージクリア、というところか。
ドアノブに手を掛けかけて、振り返って一度部屋を見渡す。
…うん。何もない。
それを確認して、
新たなドアの向こうへと足を踏み出した。
.
これまたシンプルな部屋だった。
木造で広さは六畳ほど。ベッドや椅子などの最低限の家具しかない。
「ここで暮らすことになるのか…。まぁ、学校に行かなくて良いのは少し嬉しいけど」
部屋の出口と思わしきドアを開けると、白いネームプレートがドアに掛けてあることに気付いた。
「奥津城棗」と達筆な字で書かれている。
どうやら、今のが自分の部屋だったらしい。
廊下を彷徨いてみると、他にも部屋があり「光刹那」「破沼真賀流」と書かれたネームプレートが掛かったドアと、何もないドアが並んでいた。
成る程、チームでシェアハウスするわけだ。
「となると、この何にも掛かってないのがリビング…?」
ドアを開けて一歩踏み出したが、足に変な感触があった。
「…ん?」
恐る恐る下を見てみれば。
血塗れの誰かさんの足を踏んづけてしまっていた。
普段動じない自分が久しぶりに大声を出した出来事である。
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I’m(プロフ) - A (2019年10月5日 15時) (レス) id: 12d36b8d85 (このIDを非表示/違反報告)
鯉城@二航戦バンザイ(アローラの姿)(プロフ) - 作者様、お話が全て埋まってしまったので続編お願いします。 (2017年2月3日 20時) (レス) id: fb07d4ff14 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸(プロフ) - 終わりました。 (2017年2月3日 18時) (レス) id: bf31fee5d1 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸(プロフ) - 更新します。 (2017年2月3日 18時) (レス) id: bf31fee5d1 (このIDを非表示/違反報告)
鯉城@二航戦バンザイ(アローラの姿)(プロフ) - 終わりました (2017年2月3日 10時) (レス) id: e72c19c3f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海月 x他9人 | 作者ホームページ:( ˇωˇ )
作成日時:2017年1月28日 10時