検索窓
今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:10,908 hit

第四十一話『隼』奥津城棗side ページ41

『吉田寅次郎です。後世では松陰の方が著名なのでしょうか。隣の彼は僕の塾の門下生で、山田市之…失敬、山田顕義君です。』

『山田顕義です。…戊辰戦争の討伐軍の指揮や近代日本の法典整備などを務めました』



あまりにも現実離れしたこの世界に先程の出来事、頭が付いてきていない。
多分電車の中に置いて来てしまった。

松陰先生は、教科書で見ていた絵とは全然違った。
山田さんは…写真通りだった。


『この世界で必要となる、”力”を君に授けます。僕達の力を上手く扱えるかどうかは君次第です。』

す、と差し出された華奢な白い手。

意味が分からず困惑した。
取り敢えず握手のつもりで手に触れた瞬間、カッと身体が熱くなる。
それを確認して満足気に頷くと、松陰先生は溶けるように消えてしまった。

隣が消えるのを見届けた目の前の男性、顕義さんが松陰先生同様に手を差し出した。
少しごつごつしていて、何処か懐かしい手。
顔こそ無表情だったが、目に何か強い意志が秘められている。

恐る恐る自分の手を重ねると、また血が騒ぐような感覚に襲われ、ついには二人とも消えてしまった。


自分以外誰も居なくなった寂しい空間に、
ふとドアが現れた。

第一ステージクリア、というところか。


ドアノブに手を掛けかけて、振り返って一度部屋を見渡す。

…うん。何もない。

それを確認して、
新たなドアの向こうへと足を踏み出した。




.




これまたシンプルな部屋だった。
木造で広さは六畳ほど。ベッドや椅子などの最低限の家具しかない。

「ここで暮らすことになるのか…。まぁ、学校に行かなくて良いのは少し嬉しいけど」

部屋の出口と思わしきドアを開けると、白いネームプレートがドアに掛けてあることに気付いた。
「奥津城棗」と達筆な字で書かれている。

どうやら、今のが自分の部屋だったらしい。

廊下を彷徨いてみると、他にも部屋があり「光刹那」「破沼真賀流」と書かれたネームプレートが掛かったドアと、何もないドアが並んでいた。

成る程、チームでシェアハウスするわけだ。


「となると、この何にも掛かってないのがリビング…?」

ドアを開けて一歩踏み出したが、足に変な感触があった。


「…ん?」
恐る恐る下を見てみれば。
血塗れの誰かさんの足を踏んづけてしまっていた。

普段動じない自分が久しぶりに大声を出した出来事である。

第四十二話『隼』破沼真賀流side→←第四十話『蜉蝣』闇空玲玖



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (14 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:募集企画 , 継承者 , オリジナル , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

I’m(プロフ) - A (2019年10月5日 15時) (レス) id: 12d36b8d85 (このIDを非表示/違反報告)
鯉城@二航戦バンザイ(アローラの姿)(プロフ) - 作者様、お話が全て埋まってしまったので続編お願いします。 (2017年2月3日 20時) (レス) id: fb07d4ff14 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸(プロフ) - 終わりました。 (2017年2月3日 18時) (レス) id: bf31fee5d1 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸(プロフ) - 更新します。 (2017年2月3日 18時) (レス) id: bf31fee5d1 (このIDを非表示/違反報告)
鯉城@二航戦バンザイ(アローラの姿)(プロフ) - 終わりました (2017年2月3日 10時) (レス) id: e72c19c3f6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:海月 x他9人 | 作者ホームページ:( ˇωˇ )  
作成日時:2017年1月28日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。