くちづけ四十 ページ45
貴side
左手を振れば、ナイフで肉が切れる慣れた感触
右手の指を曲げれば、硝煙の香り
右足を振り上げ、左足を降り下ろす
頬にも、足にも、腕にも
赤が嫌な感触と共に張り付く
懐かしくて、大嫌いな記憶
何も考えずに人を殺めていた時の……
気がつくと、私以外の人影が全員消えていた
血溜まりのなかでふっと上を仰ぎ見る
光用の小窓から、橙色の光がか細く見える
どうやら、もう夕方のようだ
ガクンと膝の力が抜けて、その場に崩れ落ちる
地面に倒れ伏すと、ひんやりと冷えた床が、更に私の身体を冷たくする
独りで、静かに、死体と共に──
(なんて私らしい最期だろう)
そう、これでいい……
貴「異能力──【解──」
太「A──!!!!!!」
異能力を解除しようとした私の言葉を遮って飛び込んで来たのは……
待ち望んでいたあの人
貴「なん……で……」
太「A!!」
私の肩を抱え起こす太宰さん
何時もよりも顔が近くなる
其のまま、ぎゅっと抱きすくめられた
思わず、身を固くする
太「A……」
貴「太宰、さん……」
(異能力が……解除されない?)
上手く動いてくれない身体を頑張って動かして、太宰を見る
見れば、黒手袋をした手
そして、細心の注意を払って私を抱き締めているのが分かった
私の、身体に触れないように
貴「……どう、して」
太「全部、分かってる。勝手に私の前から消えることは、許さないよ……A」
そっと私の髪を撫でる太宰さん
『許さない』などと言っていながら、其の顔は悲しげに歪んでいる
あの太宰さんでさえ無理なのだ
私の未来は、変わらない
───其れでも
(来て、くれた)
A、Aと私の名前を呼んでくれる太宰さんの頬に手を添えた
泣くことが下手くそな、彼の頬に
貴「ねぇ、太宰さん───」
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澪(プロフ) - わぁ、前に読ませて頂いて(泣いた)忘れられなかった作品にまた出会えました!!この作品大好きです。 (2020年3月11日 6時) (レス) id: 001cac99b9 (このIDを非表示/違反報告)
KAZUKI(プロフ) - 電車で読んじゃいけないやつだった(泣) (2018年12月16日 13時) (レス) id: ccd6d3c3c5 (このIDを非表示/違反報告)
きー - 感動しました。もうボロ泣きです。ありがとうございます! (2017年12月13日 0時) (レス) id: ea7bbfad76 (このIDを非表示/違反報告)
Asora(プロフ) - もう大号泣です。うわああああ(´;ω;`) 昔にも見たんですけど、やっぱりこの小説大好きです。他の作品も頑張って下さい。 (2017年7月28日 22時) (レス) id: 32969ac174 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月華(プロフ) - 祀さん» 有難う御座います。こんなに感想を頂けれるなんて……!!!凄く嬉しいです。どんどん泣いてください。其れほどに入り込んで頂けれるなんてとても光栄です。有難う御座います。 (2017年5月6日 19時) (レス) id: 70f2eb3a84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼月華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/01g/
作成日時:2017年1月1日 22時