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くちづけ三十と九つ ページ44

貴「此処ね」

目の前には金属製の扉

(私の、最後の任務)

扉を開けて

貴「皆さん、ごきげんよう」

何時ものように、嗤う

──────

太宰side


太「広津さん!!」


激しく乱れた自分の呼吸と、掌で握り潰されたメモ


太「Aは……!?」


彼女が目の前から消えた
其れを自覚した途端、地下室で彼女の泣き声を聞いた時よりも、もっと得体の知れない恐怖が私を蝕んだ
彼女の部屋は空っぽ
仮眠室にも居ない
任務の予定もなかった
在ったのは、『任務に行って参ります』と書いてあるメモだけ


太「広津さんなら知っているだろう!?」

広「……彼女なら、中ですよ」


肩を少々乱暴に揺すれば、目を伏せて広津さんが答えた
慌てて扉に手をかけたが、広津さんに腕を掴まれた


太「何、を」

広「彼女は一人で死ぬことを選びました。太宰幹部が其処まで取り乱す理由はなんでしょう。貴方は彼女を疎んでいたはずでは?」

太「…………」

広「…………」


静かな瞳で此方を見詰める広津さん

(何故…………?)

私にとって彼女は何なのだろう
何故私はこんなに焦っているのだろう
何故私はこんなに彼女を考えているのだろう
何故私は彼女に冷たくする?

何故─────────?


『近付け過ぎると──になってしまうから』


頭に浮かんだ考えを即座に消し去る

(そんなことは、ない……私が彼女を、Aを……?)

消し去ったはずなのに、思考の残滓が胸の中に重く立ち込める

訳の分からない感情
自分のことなのに
どうしてこんなにも、混乱してしまうのか──

でも、唯一、言えるのは


太「彼女は──Aは、私のもの、だ」




──其れなら、私を君の生きる理由にしたら良い

──君は、私のために生きれば良い。私に、其の人生を捧げたまえ



出会った時に交わした約束





──君は私のものだ。勝手に死ぬことは、許さない













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(プロフ) - わぁ、前に読ませて頂いて(泣いた)忘れられなかった作品にまた出会えました!!この作品大好きです。 (2020年3月11日 6時) (レス) id: 001cac99b9 (このIDを非表示/違反報告)
KAZUKI(プロフ) - 電車で読んじゃいけないやつだった(泣) (2018年12月16日 13時) (レス) id: ccd6d3c3c5 (このIDを非表示/違反報告)
きー - 感動しました。もうボロ泣きです。ありがとうございます! (2017年12月13日 0時) (レス) id: ea7bbfad76 (このIDを非表示/違反報告)
Asora(プロフ) - もう大号泣です。うわああああ(´;ω;`) 昔にも見たんですけど、やっぱりこの小説大好きです。他の作品も頑張って下さい。 (2017年7月28日 22時) (レス) id: 32969ac174 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月華(プロフ) - 祀さん» 有難う御座います。こんなに感想を頂けれるなんて……!!!凄く嬉しいです。どんどん泣いてください。其れほどに入り込んで頂けれるなんてとても光栄です。有難う御座います。 (2017年5月6日 19時) (レス) id: 70f2eb3a84 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼月華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/01g/  
作成日時:2017年1月1日 22時

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