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くちづけ三十と七つ ページ42

エ「御願い……!!死ぬなんて言わないで……ずっと一緒にいて……!!」


しゃがんでから、泣きじゃくって体温の上がった目尻をそっと拭ってやる
安心させるように微笑んだ


貴「そんなに泣いたら、おめめが溶けちゃいますよ?」

エ「ぅ……ぁ……」


それでも、いやいやと言うように頭をふって、私に抱きつく腕を強めるエリス嬢
一度強く抱き締めてから、肩を押して身体を離す
頭を撫でて、立ち上がった


貴「首領、今まで有難う御座いました」

首「……ご苦労だったね」


何時までも冷たい声にそっと微笑む
首領というものは、一人の部下の命程度に動揺してはいけないのだ
其れが、どんなに辛いものだったとしても

知っている人物は限られるが
エリス嬢は首領の異能力によって作られた存在だ

もしかしたら、首領もエリス嬢のように思いきり泣きたいのかも知れない
エリス嬢が、首領の代わりに泣いているのかも知れない


(そんなこと、誰にも分からないけれど)


最後に一度礼をしてから、私はまた空気口へと跳び上がって、首領室を後にした



────────────
────────

貴「失礼します」


太宰さんの執務室のドアを開ければ、残業していたらしい太宰さんが、昨日と同じ服装で椅子に座っていた
頭を伏せて、寝息をたてている

起こさないようにそっとドアを閉めて、隣室から毛布を取ってくる
其れを太宰さんの肩口に掛けた


貴「風邪、挽きますよ」


白い包帯と黒の蓬髪、端整な顔立ちは出会った頃と変わることなく美しい
そっとこめかみ辺りを手袋越しに撫でる

いきなり、胸の奥から何やら抑えきれない感情がせり上がって来た
泣きたいような、切ないような、変な感じ
衝動に逆らえず、こめかみに添えた手越しにくちづけを落とした
髪の毛一本足りとも触れてはならない
其れがなんとも、もどかしい

(長居は、出来ない)

『任務に行って参ります』というメモを残して、私は部屋を出た


貴「好きですよ、太宰さん。………さようなら」



私が部屋を出てから暫くして………














太「……A…………?」


毛布がぱさりと落ちた音がした














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(プロフ) - わぁ、前に読ませて頂いて(泣いた)忘れられなかった作品にまた出会えました!!この作品大好きです。 (2020年3月11日 6時) (レス) id: 001cac99b9 (このIDを非表示/違反報告)
KAZUKI(プロフ) - 電車で読んじゃいけないやつだった(泣) (2018年12月16日 13時) (レス) id: ccd6d3c3c5 (このIDを非表示/違反報告)
きー - 感動しました。もうボロ泣きです。ありがとうございます! (2017年12月13日 0時) (レス) id: ea7bbfad76 (このIDを非表示/違反報告)
Asora(プロフ) - もう大号泣です。うわああああ(´;ω;`) 昔にも見たんですけど、やっぱりこの小説大好きです。他の作品も頑張って下さい。 (2017年7月28日 22時) (レス) id: 32969ac174 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月華(プロフ) - 祀さん» 有難う御座います。こんなに感想を頂けれるなんて……!!!凄く嬉しいです。どんどん泣いてください。其れほどに入り込んで頂けれるなんてとても光栄です。有難う御座います。 (2017年5月6日 19時) (レス) id: 70f2eb3a84 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼月華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/01g/  
作成日時:2017年1月1日 22時

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