検索窓
今日:12 hit、昨日:10 hit、合計:451,835 hit

くちづけ三十と六つ ページ41

狭い空気口の中を腹這いで進んでいく
流石はポートマフィア
たかが、空気口でも監視カメラがある
この空気口がポートマフィアの最深部に繋がっているからだ
既に映像は入れ換えてあるが

(安吾にハッキング習っといてよかったわ)

厳重に警備されている分、一度突破されると対応が遅い
というか突破されたことに気づいていない

(要教育、ね)

太宰さん辺りがやってくれるだろう
そんなことを考えながら進んでいくと、目的の場所に着いた
空気口の出口からそっと様子を伺う

気配を感じさせないように
感情を殺して、周りと同化して、溶け込む
そう、人形のように
昔からやってきたこと………


物音一つたてずに空気口から飛び降りる
滑らかな動きで着地し、身体を起こす
女性特有のしなやかな身体は隠密に向いている
目的の人物の背後に立ち、太股のナイフホルダーからナイフを取り出す


切っ先をその人の首筋にあてがった時、私の首筋にもヒヤリとした感覚があった


貴「残念、相討ちですね」

森「末恐ろしいね、君は。ナイフを抜くまで気配に気づかなかったよ」


久し振りに背筋がヒヤッとした、そう言って私の首筋に突き付けていたメスを首領は仕舞った
私もナイフをなおす
その時、どんっと温かな体温が私の腰に巻き付いた

エ「A……」

貴「エリス嬢……」


美しい、西洋風の顔立ちの少女
何時もは知性と好奇心で輝いている瞳が、今は涙で濡れている
其の姿にちくんと胸が痛むのを感じながらも、視線を逸らして首領の机から書類を一枚抜き取った


貴「……此の任務。貰いますね」

首「もう、限界かね?」

貴「ええ。首領なら、分かるでしょう?」


私は首領の背後に立っているから、首領が今どんな顔をしているのか分からない
只、声だけは
普段通り、冷たく威厳のあるものだった

ぎゅっとエリス嬢が私の服にしがみつく
見れば、膜を張っていた涙が、彼女のまろやかな頬を伝ってぽたりぽたりと落ちていた
唇を震わせてエリス嬢が泣き声混じりに訴える


エ「何処にも行かないで……!!A……」

貴「エリス嬢……」












  字数

くちづけ三十と七つ→←くちづけ三十と五つ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (571 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
894人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - わぁ、前に読ませて頂いて(泣いた)忘れられなかった作品にまた出会えました!!この作品大好きです。 (2020年3月11日 6時) (レス) id: 001cac99b9 (このIDを非表示/違反報告)
KAZUKI(プロフ) - 電車で読んじゃいけないやつだった(泣) (2018年12月16日 13時) (レス) id: ccd6d3c3c5 (このIDを非表示/違反報告)
きー - 感動しました。もうボロ泣きです。ありがとうございます! (2017年12月13日 0時) (レス) id: ea7bbfad76 (このIDを非表示/違反報告)
Asora(プロフ) - もう大号泣です。うわああああ(´;ω;`) 昔にも見たんですけど、やっぱりこの小説大好きです。他の作品も頑張って下さい。 (2017年7月28日 22時) (レス) id: 32969ac174 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月華(プロフ) - 祀さん» 有難う御座います。こんなに感想を頂けれるなんて……!!!凄く嬉しいです。どんどん泣いてください。其れほどに入り込んで頂けれるなんてとても光栄です。有難う御座います。 (2017年5月6日 19時) (レス) id: 70f2eb3a84 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:蒼月華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/01g/  
作成日時:2017年1月1日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。