清水潔子にぶたれない

見え方 ページ49

西谷「そんな泣かないでくださいよA先輩〜！！」



今目の前には、私の涙をジャージの裾で拭いながら笑うノヤがいる。




「…っ、そう言うノヤも泣いてるじゃん…っ」




ノヤの明るい笑顔に安心して、涙は止まることなく流れ続けた。





西谷「っ！い、いや、これは…目から水が出てるだけであって、泣いてるわけじゃないです！！！！！」




ノヤは焦りながら自分の腕で涙を拭き、泣いてないですっ！、と言い張る。



いや、どう見ても泣いてるじゃん、男泣きかよ。





「塩分入りの水が出てるんですねー」





昔とちっとも変わらないノヤを見て思わず笑みが溢れる。



腕で顔を隠してそうですっっ！、と言うノヤにそれを泣いてるって言うんだよ、と笑えば





西谷「泣いでばぜん！！！」




ガバッと顔から腕を退(ど)け、私を見て大きな声で言った。



馬鹿か。

西谷夕と言う男は馬鹿なのか。




退けた腕から覗いた顔、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだし、声にも影響出ちゃってんじゃん。





田中「ノヤっさんガチ泣きじゃんかよ！！」





煩え、泣いてねえ！！、と言うノヤに対して田中は豪快に笑っている。



本当烏野高校男子バレー部(ここ)には良い人が沢山居る。
今までこんなに素晴らしい人達が居ることに気付けなかった自分は馬鹿だ。




澤村「神無が戻ってきてくれて良かったよ。」




澤村は私と初めて会った時のあの優しい笑顔で笑った。






マジで大馬鹿だ






澤村がこんなにも優しい笑顔で笑っている。





菅原「だべ！神無居ないと清水元気ないしなー！」




菅原がいつも通り無邪気に笑っている。




東峰「あぁ、そうだよな。それに俺、神無が居ないと女子にびびられるし…」



相変わらずヘナチョコだけど、東峰が嬉しそうに笑っている。





いくら辛かったからと言っても、苦しかったからと言っても…


自分自身に精一杯になりすぎた私は本当に馬鹿。




少し落ち着いて周りを見れば、世界はこんなにも違う。





私には笑いかけてくれる人達がいる



仲間だと思っていい人達がいる



信じていい人達がいる





私自身を必要としてくれる人達がいる









潔子「言ったでしょ。
Aのこと皆必要としてる。Aじゃないとダメなの」



口から白い歯を少し覗かせて潔子は笑った。






怖がる必要なんて無かった


怯える必要なんて無かった









潔子「おかえり、A」






なにも心配する必要なんて無かった






「ただいま…っ！」







私の居場所はここなんだから。

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