清水潔子にぶたれない (ページ25)

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前まではこのジャージを見るだけで恐ろしかった。
着ることはもう一生無いと思っていた。

でも今は不思議と心地いい。

なんでかはわからない。
こんなに幸せな気持ちでこのジャージを着たのは1年生ぶりだ。

第二体育館へ近くにつれシューズの擦れる音が聞こえてくる。
扉は閉まっているから恐らく空いた窓から音が漏れているのであろう。

「…っはぁっ…」

その音をもっと近くで聴きたくて気付いたら走り出していた。

第二体育館へ着き、練習の邪魔にならないようにそっと扉を開けると何やら練習試合中だったみたいで大人の人がコートの中に立っていた。

手に持っていたシューズを履いてそろり、と体育館の中に入り扉を閉める。

西谷「だからもう一回、トスを呼んでくれ！！エース!!!」

キュッキュッ、とシューズの擦れる音が聞こえる中、ノヤの大きなハッキリとした声が体育館に響いた。

扉を閉めるために後ろを向いていた私は勢いよくコートの方を見ると、繋がったボールが上に上がっているところだった。

この状況とさっきのノヤの発言から考えられることは、恐らく東峰のブロックされたボールをノヤが拾い菅原が誰にボールを上げようか悩んでいる、という感じだろうか。

影山「もう一回！！！決まるまで！！！」

ノヤのレシーブ見たかったな、と思っていると目つきの悪い影山くんが菅原に向かって叫んだ。

いや、それにしても影山くんはドSだね。

多分誰かが東峰にトスを上げたんだろうけどブロックされた。でもノヤがそのボールを上げてくれてまた攻撃できる。けど、この菅原がいる位置からだと東峰(レフト)のオープンの攻撃が1番確実に点を取ることができる。でも、もう一回東峰に上げてまた止められたら、と思っているはずだ。

でもそんな中影山くんはあえて”東峰”に上げろと言っている。しかも決まるまで！と言っている。

そんなの普通は出来るわけがない。まあ神経太くて図太い奴なら話は別だけど。

私がセッターだったら絶対無理。ただでさえ訳ありの奴にもう一回上げて止められたら、そいつの心だってボッキリいくし、自分の心だってボッキリいきかねない。

それに菅原は東峰がこうなったのは”自分のせいだ”とも思っているかもしれない。確かに菅原は東峰に頼り過ぎてしまったところはあるかもしれない。けど、エースに託すしかない場面がこれからも絶対に沢山ある。