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簡単に ページ19

現実を認めたくなくて頑張って頑張って、バレーをすることができる程度にはなれた。


でも、今まで通りにボールを拾ったり、膝を曲げたり、長時間走ったりすることはできなかった。

リベロを諦めたくなくて何度もボールを拾いに行った。でも一向にできるようにならない。前みたいなスーパープレイをすることができない。


自分の身体が自分のものじゃないみたいだった。


今までできていたものが急にできなくなるのは、とても辛い。
それに自分が憎くなる。

あの時の瞬間を知っている。
それに届くまでは何度だって練習してやるって思ってた。
でも、人間そう強くはない。

ただでさえ弱っていた心なんて、簡単に折れる。


ボキッと音を立てて折れた。



それからはバレーなんて一生見たくないと思った。
できない自分にムカついてしょうがなかった。



後から聞いた話によれば、私がバレー界から姿を消した理由を両親と仲間とコーチが必死に隠したらしい。

隠した理由は、神無Aが悪魔としていつでも戻って来れるように、だそうだ。


でも、私が今まで通りにバレーをできないことを知ってるはずなのに隠すなんて。

それならいっそのこと膝を故障したからもうバレーはできない、と伝えてくれればよかったのに。



時間が経つにつれ私の存在はどんどん薄まっていった。

そしてそのまま悪魔と呼ばれた神無Aという存在を消し去りたかった。



なのに、私の存在を完璧に覚えてる人が現れた。


その子は烏野高校男子バレーボール部のセッターみたいだ。

名前は影山飛雄。


影山飛雄の私を見る目は、あの時の目と同じだった。私を尊敬する目。


あの時の私を尊敬する意味はわかる。
でも、突然姿を消した神無Aのことなんて誰が尊敬する?
尊敬どころか非難の嵐になったとも聞いたことがある。

なのにどうして…影山飛雄は私のことを今でも尊敬する目で見つめるの?


そして何を私に聞きたがってた?

サインが欲しかったってのはあるかもしれない。
でも、その程度の目ではなかった。

神無Aに会ったら〜を聞こう、と決めていたような目をしていた。


正直いうと、私は強さを身にまとってるけど実際はただの弱虫だ。
力が強いだけであって精神はクソほど弱い。

だからあんな真っ直ぐな眼差しを向けられてとても恐ろしかった。

もう逃げないって決めたのに。
気付いたら逃げていた。

言ってることとやってることが矛盾している。


このままじゃ、ずっと前に進めないままだ。

アレ→←輝いていた



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さくみ(プロフ) - 947さん» そう言ってもらえて本当に嬉しいです。ありがとうございます!頑張りますね! (2020年5月6日 12時) (レス) id: 8ec2e6d345 (このIDを非表示/違反報告)
947(プロフ) - 凄い面白かったです!これからも更新頑張ってください、応援してます! (2020年5月4日 5時) (レス) id: ef0a8212f8 (このIDを非表示/違反報告)
さくみ(プロフ) - ぶーりんさん» ありがとうございます!! (2020年3月27日 21時) (レス) id: 8ec2e6d345 (このIDを非表示/違反報告)
ぶーりん(プロフ) - もう、すこい (2020年3月25日 21時) (レス) id: 4738da1722 (このIDを非表示/違反報告)
さくみ(プロフ) - 【夜型系投稿者】猫パンチさん» ありがとうございます!本当ですか!?とても嬉しいです!!! (2020年3月13日 19時) (レス) id: 8ec2e6d345 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さくみ | 作成日時:2020年3月12日 5時

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