【HQ!!】女の子の日にカレと会ったら、惚れ直しました。

黒尾×温泉旅行 ページ16

9時20分前、東京駅。
今日から一泊二日、彼氏である黒尾 鉄朗と旅行に出かけるので、ここで待ち合わせをしているのだが。

…なんで今日に限ってアレが来るの！？
朝起きて、真っ赤に染まったそれと対称的に、真っ青になったのをよく覚えている。

楽しみにしていた温泉にも入れないだろうし、多分大丈夫だろうけど、活発に動けるかどうかも怪しい。…クロに、なんて言おうかな。

なんて考えていたら、当人が目の前に立っていた。


「よお、A。待たせて悪かったな」
「ううん、さっき来たとこ」


*＊*＊*＊*＊*＊*

＿のぞみ18号鹿児島行きは、まもなく発車致します


「なぁ、弁当でも買う？」
「うーん、お腹空いてない」
「朝飯食べたのか？」


…食べてない。
あ、ダメだ。お見通し、って顔してるよクロ…


「じゃ、俺買うから、気ぃむいたら食べろな」


*＊*＊*＊*＊*＊*


新幹線に乗り、2つならびの席を運よく見つけた。私が奥、クロが通路側に座る。


「ならびの席、取れて良かったね」
「そうだな」


左隣には誰もいない。立ち乗りの人もいないし、今日は空いているようだ。


「さー、弁当食べっか」
「朝ごはん、食べてないんだ？」
「ん。軽くしか」


軽く、と言っても成人した男の人なんだから、私の普段食べる朝ごはんくらいの量くらいは食べているんだろう。

クロが彩の良い幕の内弁当を美味しそうに食べているのを見ていると、少し食欲が湧いた。


「いる？」
「んー、卵焼き貰おうかな」


っていうと、当然のように箸でつまんで口元に持ってくる。あーん、っていうやつだ。


「じ、自分で食べるっ…！」
「えー、いいジャンこれくらい」


一旦言ったら引かないと知っているので、しかたなくそのまま食べた。


「美味しい？」


なんて、やたら機嫌よく聞くのでなにかと思ったら、クロが食べた箸で食べていることに気が付いた。…つまり、間接キス。


「…っ！」


頬を赤く染めて横を見れば、クロのニヤニヤした顔が目に入った。


「これくらいで顔赤くしちゃって、かーわい」


と言いながら顔が近付いてくるので壁際に逃げたら、予想外に壁が近くて追い詰められる。


「じゃ、ほんとにキスしたらどうなんの？」


ちゅっ、と頰にキスされて。


「〜〜っ！クロの、馬鹿！」


(弁当には被害がないように考えて)小突いたら軽く避けられた。


「はいはい。悪かった悪かった」
「…うぅ」
「まだなんか食べる？」
「もう良らない！」

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